次のステージは現実世界
「実は2024年のワールドファイナルも日程的に出られるかギリギリでした」という宮園選手は、eモータースポーツ活動を継続しながら、リアルでのレース活動にも取り組んでいく予定だという。
実車レースデビュー後いきなりポール獲得
就職など、ライフステージの変化でe-Sportsの競技シーンを去るプレイヤーの年齢が低いことから、25歳の宮園選手はベテランの部類に入る。しかし、25歳はリアルではまだまだ若手だ。現在SUPER GTで活躍する冨林勇佑のように、グランツーリスモからニュルブルクリンク24時間レース、スーパー耐久を目指すという。
TOYO TIRE株式会社に入社した宮園選手は、グローバルマーケティング部モータースポーツチームに配属されてモータースポーツの関連業務に従事しつつ、個人的な活動としてロードスター・パーティレースに参戦を開始した。
ワンメイクで改造範囲も限定的なロードスター・パーティレースで、いきなりポールポジションを獲得するなど、グランツーリスモで培った実力はいかんなく発揮されている。自宅ではグランツーリスモだけでなく、より実車に近いiRacingでのトレーニングも行っているという。


「実車には、乗ってからすぐにトップから1秒落ちくらいのタイムまで迫れることもあります。しかし、そこから先のGを感じる部分などが実車にしかない感覚で、難しいポイントです。
2023年はパーティレースにシリーズ参戦しましたが、たくさんの方にアドバイスいただきドライバーとして成長できた反面、車両に頼ってしまっている部分もありました。
一方、ご縁があってフォーミュラの入門カテゴリーであるSuper-FJの鈴鹿シリーズに参戦させていただいたところ、練習することで明確に運転が上手くなっていく感覚がありました。ロードスターは良いクルマなので、多少無茶をしてもクルマの方でなんとかしてくれるところがあります。ロードスターに頼っていた部分をFJで補完できていると思います」。
実車フォーミュラにも挑戦
Super-FJのシリーズ戦には鈴鹿サーキットに参戦し、日本一決定戦にも出場した。日本一決定戦では53台中9位と、未来のトッププロ達を相手にシングルフィニッシュを達成。グランツーリスモのワールドシリーズと二足の草鞋で挑んだ2024年シーズンに確かな実績を残した。


「メカさんに調整してもらい、自分もアジャストしていった結果、地方戦で2ケタ順位が続いていましたが、大一番で結果を出せました。自分で立てていた目標のうち、最低限のことは達成できたと思っています。同時に、Super-FJで10位以内に入るのは、グランツーリスモで世界一になるよりも大変です。
リアル日程の重複する可能性があるグランツーリスモワールドシリーズにも、引き続きフル参戦したい思いは強くあります。一方で、実車のレース参戦について、将来同じチャンスが巡ってくる保証はありません。常にチャンスがあれば乗り込む準備はできていますし、いずれも全力で頑張っていきます」。

「やらずに後悔よりやって後悔。悩んだらやってみよう」と前を向く宮園選手の視線の先には、SUPER GTのGT300クラスがある。カートの経験もなければ、実車のハンドルは教習車で初めて握った。大学を卒業して会社員になってから初めて現実のレースに出たと聞けば、多くの人は「頂点を目指すには遅すぎる」と思うはずだ。しかし、4歳からのグランツーリスモは宮園選手に確かな技術を植え付けてきた。
恐らくe-Sportsとリアルの間が実践的な技術で繋がっている唯一のソフトがグランツーリスモだ。速くなりたいがクルマがないなら、「ゲームだし…」と侮らずにグランツーリスモをプレイしてほしい。宮園選手をもってしても1時間以上体力が持たないという、タフなレース体験ができるはずだ。