今もっともホットなレースのひとつであるロードスター・パーティレース。全国で4つのシリーズ戦が展開され、入門者やジェントルマンからステップアップを目指す若手まで、多くのドライバーが参戦している。
1.5リッター、1010kgという軽量FRスポーツの素性を活かしたオープンカーのカップ戦は、現役のSUPER GTドライバーも輩出している本格派の表情も持つ。2015年に5戦3勝でパーティレースⅡのシリーズチャンピオンを飾ったSUPER GTドライバー堤優威氏に、その魅力や走り方を解説してもらった。
ロードスター・パーティレースとは
ロードスター・パーティレースは、マツダ・ロードスター(NR-A)を用いたワンメイクレース。全国シリーズの他に北日本・東日本・西日本の地域シリーズも開催されている。各レースではND-S(シリーズ戦)とNS-C(クラブマン)が混走し、クラス別に表彰される。
主な車両スペック
主なパーツ | 緒元 |
---|---|
エンジン | P5-VP[RS](直列四気筒・1496cc) 132ps(7,000rpm)/15.5kg・m(4,500rpm) |
タイヤ | POTENZA Adrenalin RE004 |
駆動方式 | FR |
ボディ | アルミモノコック |
ミッション | 6速MT |
車体重量 | 1010kg |
価格(税込み) | 3,064,600円 |
2024年開催日程(ジャパンツアーシリーズ)
Round | サーキット | 日程 |
---|---|---|
1 | スポーツランドSUGO | 4/7 |
2 | 筑波サーキット | 5/5 |
3 | モビリティリゾートもてぎ | 6/16 |
4 | 十勝スピードウェイ | 8/11 |
5 | 鈴鹿サーキット | 9/28 |
6 | 富士スピードウェイ | 10/19 |
7 | 岡山国際サーキット | 11/9 |
8 | オートポリス | 12/8 |
クリーンなレースと和やかな雰囲気
ロードスター・パーティレースのレギュレーションは、車両の改造範囲を厳しく限定している。車両価格もレース車両としては低価格なため、入門カテゴリーとして初心者からステップアップを狙う若手が参戦している。また、レース内で接触を起こしたドライバーは当該レースのシリーズポイントが無効になる。
「レースがクリーンなため、選手同士の仲がいいことが特徴だと思います。私が参戦していた時にはセッティングの内容をお互いに共有する場面なども見られました。仲良く、楽しく、でも真剣勝負。これはあまり他のカテゴリーでは見られない光景です」。
レースの特徴
「ピッチやロールでマシンがよく動くため、クルマの基本的な動きを勉強する場として最適。クルマの動きという意味では、私がレースキャリアの中で最も多くの学びを得られたレースです」。
ロードスター・パーティレースは、ベース車両はもちろんタイヤやブレーキパッドもワンメイクのため、ドライバーの技術が表れやすい。競技規則上サスペンションは変更不可なため、柔らかい足回りでレースを行う。
タイヤは市販ラジアルのポテンザ Adrenalin。極端なハイグリップタイヤではないので、グリップの限界を使い切る感覚をつかむのにも役立つ。加えて摩耗も激しくないので、複数レースにも耐用できるという。愛車を自走してサーキットに行き、レースを重ねれば愛着も強まるだろう。
ロードスターはオープンカーだ。レースも晴れの日は幌を開けて行われる。「幌を開けていると空気が巻き込むので、スリップストリームが発生しやすくなります」。空気抵抗が減れば後続車両は差を詰めやすい。熱戦を演出する仕掛けは屋根にもある。
予算
全国シリーズに参戦するための予算は、チームからマシンを借りる場合で400万円程度から。ぶっつけ本番でレースする場合のエントリー費用は、車両のレンタルも含めて50万円程度だという。自前で車両を持っている場合はこの限りではない。参戦には国内Aライセンスと参戦費用が必要になる。
費目 | 費用(税込み) |
---|---|
シリーズクラス | 49,500円 |
クラブマンクラス | 47,300円 |
合同テスト | 15,400円 |
勝利のカギとは…?
予選を1ラップで終わらせる
ロードスター・パーティレースはスプリントレース。予選で上位を獲得することがとても重要になる。ポイントは一発で好タイムを出すことだ。堤氏は「私の場合、周りの人がアタックを諦め始める予選セッションの後半にコースに出て、計測1周目だけ走ってピットに戻っていました」と語る。
パーティレース仕様のロードスターは、長時間にわたって全開走行を続けると熱でタイムが低下していく。したがって、予選で好成績を出すためには、計測1周目でベストタイムを出す必要がある。ラップを重ねるうちに習熟が進みタイムが伸びることもあるだろうが、それではポールポジションを取るのは難しいという。
「クルマのポテンシャルは計測1周目がピークです。そこでベストタイムを出すためには慣れが必要。あとは根性ですね(笑)」。
不慣れなサーキットの計測1周目でベストタイムを出すのは難しい。最低限慣れるためにシミュレーターを活用するなどしてもいいだろう。
決勝でも熱には注意
予選は熱の関係で1ラップでのアタックを終えることが重要になるが、決勝でも熱には注意を払う必要がある。真夏にスリップストリームを使い続ける、フルプッシュを続けるなどすると、水温・油温が上昇し、電子制御の介入でパワーダウンが発生する。ここ一番でスリップストリームに入ることは勝負をする上で問題ないが、入りっぱなしは避けるようにしよう。
広いコースではダイナミックな走りが必要
富士スピードウェイなどの広いコースが得意な人と、筑波サーキットなどの小さなコースが得意な人がいる。ロードスターは軽量でコンパクトな走りが可能だが、パワーは大きくないクルマだ。しかし富士スピードウェイなどの広いコースではダイナミックな走りが必要になるという。
「コース幅の広いサーキットではブレーキを残しすぎず、ピッチとロールを使ってボトムスピードを稼ぐ走り方が必要です。普段小さいサーキットを走っている方はブレーキングでタイムを削ろうと頑張ってしまう傾向があると思います。そんな方はブレーキを早めに離し、コーナー中のエンジン回転数を高く保つ走り方を心がけるといいでしょう」。
スーパー耐久へのステップアップも!?
マツダは「『共に挑む』チャレンジプログラム」と銘打って、ロードスター・パーティレースで好成績を残したドライバーをスーパー耐久ST5クラスに抜擢するプログラムを実行している。スポットでの参戦になるが、ステップアップを狙うドライバーにとっては大きなチャンスになる。
「S耐で速さを見せられれば、他のチームや86/BRZ Cupなどのチームの目に留まることもあるでしょう。スポンサー集めや持ち込み費用などの課題は発生しますが、S耐の先にはSUPER GTのCドライバーなどの道もあります」。
堤氏自身、2015年のシリーズチャンピオン獲得後にS耐、86/BRZ Race、SUPER GTと歩みを進めている。また冨林勇佑選手もロードスター・パーティレース出身のSUPER GTドライバーだ。
トップカテゴリーへいたる道は細く険しいが、ロードスター・パーティレースは確かにGTドライバーを輩出してきた。身近なロードスターで行われる熱いバトルは、国内のトップレースへと続くハコ車乗りの登竜門だ。FRで純粋なワンメイクのレースがしたい!という方にとってはこの上ないフィールドになるだろう。