レース入門者から本格派まで楽しめるワンメイクレース「N-ONE OWNER’S CUP」。なんと新車価格1,952,500円(税込)~のナンバー付き軽自動車(660cc)で戦えるという低予算の手軽さが魅力だ。
レースを2ヒート制にしてもなお枠が足りず、参戦できないドライバーが出てくるほど人気が高まっている。今回は2021年のシリーズチャンピオンである川福健太氏に、レースの魅力と、このレースで上位常連が必ず施しているという風変わりなセットアップの内容を聞いた。
手軽さがコンセプト!N-ONE OWNER’S CUPとは
N-ONE OWNER’S CUPは、ホンダの軽自動車N-ONEを用いて開かれるワンメイクレース。8サーキット全11大会で争われる、手軽さがコンセプトの「参加型モータースポーツ」だ。JAF公認競技のため、運営やルールはJAFの競技規則に準拠して開催される。
2024年度開催日程
Round | 日程 | サーキット |
---|---|---|
1 | 3/10 | モビリティリゾートもてぎ |
2 | 4/13 | 富士スピードウェイ |
3 | 5/18 | オートポリス |
4 | 6/9 | 筑波サーキット |
5 | 6/22 | スポーツランドSUGO |
6 | 7/6-7 | 鈴鹿サーキット |
7 | 8/24 | モビリティリゾートもてぎ |
8 | 9/15 | 十勝スピードウェイ |
9 | 10/12-13 | 富士スピードウェイ |
10 | 10/26 | 岡山国際サーキット |
11 | 12/7 | 鈴鹿サーキット |
参戦可能な車両はターボ・FF・CVTの3条件が揃ったモデル(DBA-JG1・6BA-JG3)のみ。参戦にあたっては最低限5つの部品を装着すればいいというレギュレーションが新規ドライバーを多く呼び込んでいる。
項目 | スペック |
---|---|
排気量 | 660cc |
タイヤ | 低燃費タイヤ |
最高速 | 140km/h |
改造範囲 | 車検適合かつ競技規定内 |
競技規定詳細 | 公式サイト |
一戦あたりの参加費用は49,500 円(税込)。マシンを自前で用意できている場合の参戦コストは、移動・宿泊費含めて一戦10万円~20万円。「車両をチームからレンタルする場合でも、11戦のシリーズに総額200~300万円でフル参戦できます」と川福氏。
関係者によれば、中古車でも参戦可能。安く済ませたければ20万円~30万円の中古車に参戦に必要なパーツを組んで、約100万円+αほどで参戦車両を作ることも可能だ。
N-ONE OWNER’S CUPの特徴は、サーキット初心者からプロまでの幅広い選手層と参戦台数の多さだ。レースは毎戦フルグリッド。23年4月に開催された富士ラウンドには78台がエントリーした。
「先頭でバックミラーを見ると、数えきれない人を引き連れて走っていることがわかります。その景色、爽快感は他では味わったことがありません」。
あまりの人気から応募がオーバーし、予選以前に参戦自体を受理されないこともある。今、日本で最もドライバー人気の高いカテゴリーと言えるだろう。
N-ONE OWNER’S CUPの魅力と優勝の条件
N-ONE OWNER’S CUPには練度の異なるドライバーが数多く参戦する。優勝争いをするプロや大ベテラン、それを追いかけるサーキット上級者、そしてレース自体を楽しむ初心者という構図だ。ベテランの中にはシリーズ開幕の2014年から参戦を続けているドライバーもいる。どのような魅力が百戦錬磨のドライバーを10年間も引きつけ続けるのか。また優勝に必要な要素は何か。川福氏に語ってもらった。
「実際に走ってみると奥深いレースなんです。レギュレーションで大きな性能差はできないので、経験と知恵をこらした工夫でライバルを出し抜く必要があります。優勝に必要なのは大きく分けて3つ。まずは前輪駆動で腰高なN-ONEの特性に慣れて乗りこなすこと。クルマのコントロール性は意外とシビアで、そこを詰めていくのが面白さのひとつです。
次に、N-ONE OWNER’S CUPで勝つためには日本中のサーキットを攻略しなければいけません。大会はビッグレースと併催するので、北は十勝(北海道)から、南はオートポリス(大分県)まで走りこなす必要があります。
最後に、コースに応じたセットアップを決めること。この3つが揃わないとシリーズチャンピオンは獲得できません」。
次に、ドライバーとして「面白い!」と感じるポイントを聞いてみた。
「レース初心者であれば、Super GTが走っているサーキットでライバルと競えること自体が大きな喜びですよね。しかもビッグレースと併催するので、大勢の観客に囲まれた華やかなレースウィークをドライバーとして過ごせます。
一方、上位を狙うドライバーは0.1秒を削りだすためにあらゆる手を尽くします。関係者やプロはそんな環境で優勝する難しさを知っているので、コメントや評価をもらえると素直に嬉しいですね。トップを取るためならレギュレーションの許す範囲でなんでもやります」。
チームとパーツメーカーがタッグを組んで、改造パーツの認定を取るために開発を進めるケースも多いのだという。