LOTUS CUP JAPANは国内唯一のJAF公認MRワンメイクレース。レースでは、流麗なデザインのボディから発せられる甲高いサウンドが響き渡る。今回は富士スピードウェイでのレースに突撃。運営にたずさわる中村氏と、ゲストドライバーとして参戦していた桂 伸一選手と佐藤 久実選手にその魅力や走らせ方を聞いた。
LOTUS CUP JAPANとは
ほぼ純正のロータスマシンで争われるLOTUS CUP JAPANは、ナンバー付きのEXIGEとELISEによる混走形式で開催。レースの賞典はEXIGEのCLASS 1と、ELISEのCLASS 2に分けられている。走行性能に関わる改造は全く認められていないので、基本的に安全装備を追加した市販車両の走りを味わえることが特徴だ。
2024年開催日程
レースは国内3サーキットで年間5戦が開催されている。
Round | サーキット | 日程 |
---|---|---|
Round 1 | 富士スピードウェイ | 4/14 |
Round 2 | 富士スピードウェイ | 4/14 |
Round 3 | スポーツランドSUGO | 9/1 |
Round 4 | モビリティリゾートもてぎ | 10/20 |
Round 5 | モビリティリゾートもてぎ | 10/20 |
参戦マシン
以下では2024年に主要なマシンとして参戦している、EXIGE SPORT 350とELISE SPORT 220を紹介している。いずれの車両も国内での新車販売は終了しており、レースに参戦できる車両は順次追加されている。
EXIGE SPORT 350
エンジン | V6 3,456cc+スーパーチャージャー 350ps/7,000rpm 40.8kg.m/4,500rpm |
サスペンション | 前後ダブルウィッシュボーン |
トランスミッション | 6速MT |
車体重量 | 1,125kg |
タイヤ | ADVAN A052 |
車両価格 | 中古相場約1,000万円 |
ELISE SPORT 220
エンジン | 直列4気筒 1,798cc+スーパーチャージャー |
サスペンション | 前後ダブルウィッシュボーン |
トランスミッション | 6速MT |
車体重量 | 924kg |
タイヤ | ADVAN A052 |
車両価格 | 中古相場約800万円 |
LOTUS CUP JAPANの魅力
まずは、レースの運営に3年ほど関わっている中村氏がその特徴を話してくれた。
「ナンバー付きで自走してきても、十分軽量かつレーシーな走行体験が可能。サーキットで走るために生まれたロータスの魅力を感じてほしいです。そのため手ぶらでサーキットに来てレースできる、レンタカーのパッケージもご用意しています」。
参戦ドライバーはジェントルマンが多い。譲るところ、攻めるところをはっきり切り分けたマナーのいいレース展開が特徴だという。
「お互いをリスペクトしながら走る姿はとても印象がいいですね。富士での2分切りを目指す仲間にアドバイスをする光景なども見られます」。
続いて、実際に参戦しているドライバーにレースやクルマの印象を聞いた。
桂 伸一選手
桂伸一選手はスーパー耐久シリーズなどで活躍しているレーシングドライバーで、日本カーオブザイヤー選考委員でもある。今回はゲストドライバーとしてスポット参戦した。LOTUS CUPには開始初期から時折スポット参戦しており、「イギリス車に乗っている方々はさわやかな大人が多いですね」と言う。
「クルマは低重心・軽量で、公道を走れるレーシングカーのようです。普通のクルマと違い、タイヤの限界付近でアンダーステアやオーバーステアがシビアに表現されるので、そのコントロールが難しさであり楽しさでもあります。
特にリアのグリップ限界を超えた瞬間のコントロールが難しい。富士の100Rはいい例ですね。逆に言うとタイヤの限界付近でのコントロールを学べるので、上位カテゴリーで戦いやすくなるでしょう」。
佐藤 久実選手
佐藤久実選手はニュルブルクリンク24h・JGTC(現:SUPER GT)・スーパー耐久などで活躍したレーシングドライバーで、日本カーオブザイヤー選考委員。
「LOTUS CUP JAPANの車両は、市販車をそのまま使うNゼロ競技の中で最もレーシングカーに近い動きをします。昨日初めてELISEに搭乗しましたが、ひらひらと舞うように動くので『なんて楽しいクルマなんだ!』と思いました。
市販ラジアルタイヤでもカチっとした足回りが、ライトウェイトスポーツ特有の楽しいドライビングを実現しています。限界付近でマシンが滑ってもコントロールしやすいところが楽しいポイントですね。やりすぎた操作をしても大きなしっぺ返しを受けずに修正できるやさしさがあります。
鬼門は、富士であれば桂さんもおっしゃっていた通り100Rです。逆にコカ・コーラコーナーから100Rにかけてボトムスピードを維持しながら駆け抜けられると、とても気持ちいですよ。マシンの速さや楽しさもさることながら、マナーなどを含めたレース全体の質が高いことがLOTUS CUP JAPANの魅力です」。
LOTUS EXIGE V6 / ELISE の走らせ方
走らせ方について、まずは運営の中村氏に聞いた。
中村氏は、ブレーキングポイントがLOTUSの一番難しい点だと教えてくれた。ABSに介入されて、ブレーキ踏力を戻されないギリギリのポイントを探すのに多くのドライバーが苦労しているのだという。
続いて桂選手と佐藤選手にも聞いた。
EXIGE:桂 伸一選手
レーシーな動きがLOTUS CUP JAPANの魅力という桂選手は、限界を超えてスピンするときの挙動を知ることをすすめてくれた。
「限界にたどり着くまでは、どんどんスピードを上げていくのが楽しいクルマです。サーキットのスポーツ走行、スクールやイベントなど安全な場所で、限界付近での動きを知るといいでしょう」
ELISE:佐藤 久美選手
ひらひらと動く楽しいELISEは、何を意識すれば速く走れるのだろうか。
「とても線の細いクルマなんです。グリップとスライドの間にある狭いスウィートスポットへ、うまく乗せ続けてあげないとタイムが出ません。その反面、滑ってロスしても、そこから操作不能になるまでのコントロール域が広いことが特徴です。
LOTUS CUP JAPANのタイヤはグリップ限界があまり高くないので、オーバースピードで滑らせないよう美味しい場所を探ってください。
加えて、ELISEはブレーキを引きずりながらコーナーへ進入すると全然曲がりません。素性のいいクルマなのでひらひらとは動きますが、ABSなどの電子制御による介入がどこで発生するのか確認しながら、仲良く走れるポイントを探すのが大切です。最近のクルマすべてに言えることですが、ELISEもクセを早くつかむとタイムアップにつながるでしょう」。
LOTUS CUPで洗練されたレースを楽しむ
LOTUS CUP JAPANは2024年からホスピタリティを拡充して、より多くのロータスオーナーを呼び込んでいるという。今回パドックに設営されたテントには関係者用のシートやドリンクが用意されていた。ドライバー以外も楽しめる環境の整備が進んでいる。
LOTUSのオーナーが峠を流すだけではもったいない。「サーキットのために生まれたマシン」で仲間と競う機会があるなら、腕を試す格好の場ではないだろうか。
写真:松下典宏 &Race編集部