軽量レーシングカーVITA-01は、本格的な走りを楽しめるピュアレーシングカーでありながら、多くのガレージがレンタルも行っている初心者向けのマシンだ。そんなVITA-01を使ったレースが近年注目を集め、ジェントルマンを中心に人気を博している。そこで今回はVITA-01でスプリントレースや耐久レースへの出場経験があるRacing School GoTakeインストラクターの岩岡万梨恵選手に、その魅力や競技の特徴を聞いた。
スプリントレース「FCR-VITA」
VITA-01を用いる「VITA RACE」は、2025年現在全国8サーキットで計36レースが開催されている。岩岡選手がフル参戦していたFCR(富士チャンピオンレース)-VITAは、富士スピードウェイを舞台にする決勝わずか10周のスプリントレースだ。エントラントは50台に達し、長いホームストレートを埋め尽くすほどの隊列ができる。
1,475mのホームストレートではマシンの後方に強烈なスリップストリームが発生するため、前だけを見て走っていると後続にぐんぐん追い上げられる。また、VITA-01はコックピットが外気にむき出しのため、ドライバーの聴覚でもスリップストリームに入ったことが如実に感じ取れる。
予選の走り方-スリップストリームに入るか否か
多くのドライバーがエントリーしているため予選の重要度は高く、ワンミスが命取りになる。「予選はタイムを出したい思いが高ぶりますが、練習以上のことは絶対にできないので、自分がやってきたことを信じて力を出し切ります」と岩岡選手。
そんな予選では「ドライビングスクール」とも呼べる現象が発生するのだという。
「富士スピードウェイの長いストレートでは、スリップストリームに入れるか否かでタイムが約1秒変わります。自分は誰かのスリップストリームに入りたいですが、他の人には自分のスリップストリームを使わせたくない。
そうすると、速いドライバーがコースインしてタイヤを温めているうちにどんどん人が集まって行列になるんです。お互いに速いドライバーのゼッケンは把握しているので、『他の人を使って自分のタイムを上げる』ような走りができます」

それぞれの思惑を抱えて「ドライビングスクール」にコースインするものの、自分と同じタイミングで前のドライバーがアタックを始めなかったり、アタック中にウォーミングしている車両に引っかかったりする。狙い通りの走りをできるわけではないので、自分のペースで走れる人は強みを出しやすいと岩岡選手は語る。
「スリップストリームはあきらめて距離を取り、自分のタイミングでタイヤを温めてアタックするなど、自分の流れに乗るための切り替えが重要です。レギュレーション上無線は使えないので、自己判断でのアタックになります。偶然前を走っているマシンのスリップストリームに入れることもあるので、予選は祈りながらチャンスを探します」
決勝-先を見越した走りが重要
最大約50台が一斉にスタートする決勝では、四方八方を他のマシンが埋め尽くす。1コーナーへの飛び込みも数珠つなぎで逃げ場はない。全員が接触を避けてポジションをひとつでも稼げる「抜け道」を探しながら、ライバルをかき分けていく。
「わずかなスリップや修正舵の発生で一気に順位を失い、そこから抜き返すのは至難の業。また、ブレーキングでオーバーテイクしても、その後のストレートでスリップストリームから抜き返されます。『その後の順位が安定するので抜くのは1コーナーまで待とう』といった、先を見越した走りが重要です」
富士スピードウェイには広大なエスケープゾーンのあるコーナーが多く、逃げ場を失ったマシンがコースアウトしても大クラッシュを起こしづらい。岩岡選手は「だから富士では思い切った走りができる」と語る。
電子制御のないVITA-01はミッションのリンケージが斜めに走っていたり、オーバーレブでミッションブローを起こしやすかったりと、繊細でトリッキーな一面がある。しかし、「事故なく走れればとても楽しいレースですし、幅広いレベルのドライバーと走ることで間違いなくレベルを上げられるでしょう」と岩岡選手。

耐久レース「MEC120」-バトルの練習にも
MEC120はVITA-01と、同じくピュアレーシングカーのv.Granzを用いる120分間の耐久レースイベント。全国のサーキットで開催されており、プロとジェントルマンのペアでの参戦も盛んだ。参戦当時経験の浅かった岩岡選手は、「全力で走れ!」というオーダーのもとがむしゃらに走り込んでマイレージを積んだ。
決勝では3分以上のピットストップを2回行うと定められている。給油やタイヤ交換には時間的余裕があるものの、身長153cmの岩岡選手が178cmの男性とペアを組んだ際は発砲ウレタンの特製シートを丸ごと交換する必要があり、ピットはさながら戦場だったという。
「3分間の停止は義務ですが、それ以上留まることは単純にロスです。3分ぴったりでピットアウトできるように計算し、ドライバーチェンジの練習やピット戦略づくりをしました。スティントの組み方はチームによって変わるので、どのように規定の交代要件をクリアするかも見どころです」

VITA-01は2009年に登場したマシンのため、足かけ15年以上乗り続けている熟練アマチュアドライバーもいる。彼ら「VITA職人」はSUPER FORMULAなどに参戦するプロドライバーに匹敵する実力を持っていることもあり、安定した走りと熟成されたセッティングでプロをおびやかす。
岩岡選手はスプリントと耐久でセッティングを大きく変えることはなく、次のレースにつなげられるようにマシンに慣れ親しむことを優先したという。
「MEC120はたくさんのマシンやプロの中で走るので、本格的なバトルの練習にもってこいです。一方でスプリントよりもバトルがガツガツしておらず、レースに慣れたい方にもおすすめです」
VITA-01は初心者からトッププロまで愛好家が多く、そのレースシーンも色とりどりだ。スプリントで自分の腕を磨くか、プロとドライバーとペアを組んで耐久レースに臨むか、全国に幅広い選択肢が広がっている。もしも悩んでしまったら、岩岡選手に相談してみると参戦と勝利のヒントがもらえるかもしれない。


