KTの走らせ方・戦い方
KTの走らせ方も伺ってみた。ポイントは高い視野を持って、コース全体のボトムスピードを稼ぐことだ。
ボトムスピードを高める走り
「KTはハードブレーキでマシンが止まってしまっても、加速で強引に減速を取り戻せるほどエンジンのパワーがありません。だからボトムスピードを稼ぐことがとても大切になります。ボトムスピードを稼ぐためには先々のコーナーまで見据えたブレーキングとアクセルワークが大切になります」。
目の前のコーナーを見つめて、コーナーが迫ったらブレーキ、ハンドルを切ってそろそろかなというタイミングでアクセルオン!という走りをするとコーナーが複合しがちなカートは速く走らせられない。コーナー1個1個にブレーキングのやり方があるので、コース全体を俯瞰した走らせ方を心がけよう。
「また、グリップ力と加速力にものを言わせた走らせ方ができないということは、コーナーでスライドが始まるとコーナー丸ごとミスになってしまうことを意味します。背中やお尻に伝わるタイヤのグリップを感じ取りながら限界を探りましょう。
止める、曲げる、立ち上がるをひとつの物語としてまとめ上げることで、コーナーからストレートまで全体のスピードをボトムアップできます」。
フィニッシュまで全開のバトル
KTのレースにおける特徴は終始バトルが白熱することだ。参加台数の多さもさることながら、タイヤの特性がバトルの激しさに拍車をかけている。
「SSクラスはタイヤの寿命がROTAX MAXなどと比べて長く、スプリントレース中のタイヤマネジメントはほとんど不要です。つまりずっと全開アタックです。しかも繊細なブレーキさばきを要求するグリップ力なので、オーバーテイクを仕掛けたマシンが止まり切れずにクロスラインで抜き返される場面も多くなります」。
全開でアタックし続けながら、ライバルが一瞬作った隙に飛び込み、しっかりマシンを止めて再びアタックできるレコードラインに戻すためには高度な技術が必要だ。上位カテゴリーで走るドライバーが久しぶりに乗ると苦戦を強いられることも珍しくないという。
セッティング
KTは走行中にもセッティングを行う。右手の後方にあるキャブレターでベストタイムが出るようにガソリンと空気の混合比を調整する。このセッティングは誰とも会話できないカート上で、自分の感覚を頼りに行うことになる。
「夏の暑い時には少しガソリンの量を増やしてエンジンがオーバーヒートしないようにします。湿度が多い日にはプラグがガソリンで濡れてしまわないように空気を少し多めに配合。その日のコンディションやエンジンの性格に合わせて調整を行います」。
また、サーキットでのセッティングというと走行会でダンパーなどを調整しながら様子を見たことがある人も多いだろう。しかし、カートにはサスペンションがない。もちろんターボやトランスミッションもない。
そこでカートはギア比、車高、シャフト、トレッドなど、ドライブトレインに直結するパーツをすり合わせながら速く走れるセッティングを探っていく。
「究極にパーツが少ないからこそ何1つ疎かに出来ないのがレーシングカートです」。