小学生からシニアまで、愛好家とプロ志望を問わずに多くのドライバーから愛されているKT。若年層のレース第一歩からシニアの趣味、果てはプロのトレーニングとしても乗られている同機は、50年近くにわたってモータースポーツのすそ野を支え続けている。
入門向けとはいえ、走らせ方は奥深く、レースで勝つことは簡単ではない。今回はKT出身で、現在はKYOJO CUPで活躍中の坂上真海氏に、その魅力や特徴、走らせ方などを伺った。
KTの特徴
KTはレーシングカート専用100cc2ストロークエンジン、ひいては同機を搭載するカートの愛称だ。現行モデルの正式名称は「KT100SEC」。KT搭載カートで開催されているレースや、エンジンについて知らいたい方はこちらの記事をご覧いただきたい。
以下ではハコ車(4輪自動車)や他のカートと比べながらその特徴を見ていこう。KTには「軽くて速い!」で終わらない奥深さがある。
ハコ車(4輪自動車)との違い
ハコ車とカートの違いは、全てが小さく、スピーディーなことだ。1分以内に周る1km未満のコースには10以上のコーナーがレイアウトされ、右へ左へとドライバーを揺さぶる。サスペンションがなく、座面は地上高10cm。身体をむき出しにして地面スレスレを100km/hで走れば体感速度は200km/hを超える。
「しかしコーナリングスピードはハコ車と大きく変わりません。つまり、狭いコースを高いスピードで小刻みに周るため、息をつく暇がなく疲れます。ハコ車であればストレートで休憩できますが、カートは常にGを受けながら操作します。
また、サスペンションがないため、ハンドルを切ってからマシンが左右に動くまでの時間が非常に短いです。フルサーキットに比べてコース幅が数分の一と細いため、狭い場所で素早く精確に動かす技術が求められます」。
他のカートと比べての特徴
KTはレーシングカートの中ではグリップが低く非力な部類に入る。一方で最も一般的なSSクラスの最低車重はドライバーを含めて145kgしかない。最も普及しているレンタルカートのSodiがドライバー抜きで150kg前後であることと比べるとその軽量さが際立つ。
「ラジエーターのない空冷エンジンは軽く、小回りに優れます。ある程度ハイスピードでも素早くコーナーから立ち上がれることはKTの特長です。
比較的パワーとグリップが小さいことにはメリットも。激しくブレーキングして一気に加速するストップ・アンド・ゴーの動きよりも、ボトムスピードを稼ぐ滑らかな走りに適しており、身体への負荷は他のカテゴリーよりも低めです。
総じてグリップとスピードのバランスがよく、プロがオフの練習に乗ることにも納得のマシンです」。