2021年のシリーズチャンピオン獲得以来、3年ぶりにN-ONE OWNER’S CUPにフル参戦した川福健太選手。スーパー耐久にも参戦し、Racing School GoTakeインストラクターとしても活躍する、走りと教えのプロだ。
鈴鹿サーキットで開催されたFINALでは優勝を飾るなど、王者の帰還として堂々たる成績を残した。しかし、その裏側では、上位陣ではマイノリティであるグッドイヤータイヤの投入などの奇策もあったという。今回は川福選手のN-ONE OWNER’S CUP 2024シーズンを振り返る。
3年ぶりの参戦でも表彰台に乗り続けた
ーー3年ぶりのフル参戦はいかがでしたか?
川福 この3年間でレギュレーションが大きく変わっており、特にタイヤハンデに上位のドライバーはみな苦しんでいるという印象を受けました。2024年は、表彰台に一度でも乗ると、それ以降のレースでは毎回フロントタイヤに新品を使う必要があるというハンデが課されます。
フロントタイヤは多少使い込まれた後の方が良いタイムが出るため、このハンデが表彰台の顔ぶれをとても流動的にしています。2023年にも、ハンデで順位を落とすドライバーが多く見受けられていました。原因はタイヤのバランスセッティングに上手くアジャストできていないことです。
ーーそれでは、川福選手はタイヤハンデとどのように向き合おうとしたのですか?
川福 僕は逆に、自分が「新品ハンデ」を背負っても表彰台に複数回乗れればチャンピオンに近づけると考え、シーズン開始前の冬場に新しいセッティングをテストしていました。タイヤが新品になったときのクルマの変化に合わせた乗り方とセッティングがマスターできれば、チャンピオンになれると思ったんです。
開幕戦では3位表彰台に乗りました。問題はここからです。続く第2戦ではいいところまでタイヤハンデを攻略できていたのですが、力及ばず2位。以降3戦目では3位以上の順位でレースを終えられています。
タイヤハンデを克服するGYタイヤ策
ーー表彰台に乗り続けるために、どのような工夫をしたのでしょうか?
川福 実はチーム体制にも少し変化があり、Rd.10の岡山国際サーキットとFINAlの鈴鹿サーキットでは、以前チャンピオンを獲得したチームとタッグを組みました。当時もグッドイヤーとパートナーシップを結んでいたチームだったので、僕たちもグッドイヤータイヤを選択しました。
しかし、この選択はお付き合いでしたわけではなく、明確な勝ち筋があっての判断です。
このグッドイヤータイヤ、N-ONE OWNER’S CUPにはほとんど利用者がいません。熱の入りが早く、一発のタイムも出るのですが、スイートスポットが狭くて熱ダレしやすいんです。ピークグリップは鈴鹿サーキットで1ラップもつか否かというレベルです。
特に最終戦の鈴鹿は寒くなることがわかっており、グッドイヤーは寒いコンディションと相性がいいことも知っていました。そこで、最終戦では予選1周のアタックに賭けてセッティングを合わせていきました。勝負はアウトラップ後の1周。そのラップの中でも、ラップ終盤までタイヤをもたせる必要があります。
予選でポールポジションを取れれば、あとはトレインの先頭に蓋をして逃げ切るという作戦ができます。ADVANタイヤの方がレース中盤以降でタイムを伸ばしてくるのですが、FINALの鈴鹿では見事に作戦が決まりました。
N-ONE OWNER’S CUPの面白さ
ーーN-ONE OWNER’S CUPに参戦すると、特に何が面白いですか?
川福 予選でタイヤの消耗を最小限にするなど、予選の組み立てからレース全体を上手く組み立てた人が最終的に決勝での勝負権を持てます。そのためにはタイヤの特性を理解して、良いところを最大限に引き出す走り方が重要になってきます。
N-ONE OWNER’S CUPは軽自動車のレースですが、生半可なことをすればすぐ結果に跳ね返ってくるのが面白いですね。レーサーとしての成長にもつながるので、いつも参戦していたよかったと感じます。
川福選手は30歳を過ぎてモータースポーツ活動を本格化させたというスロースタートをものともせず、参戦するレースで片っ端から勝利を掴んでいる。Yaris Cupでの日本一も獲得するなど、日本最強のFF乗りとしての立場を確かなものにしようとしている。
その原動力はあらゆる場面の情報を成長の糧に変えてしまう吸収力だ。ジェントルマンドライバーの夢を実現し続ける川福選手の活動から目が離せない。川福選手から走りを教えてもらいたい方は、こちらのページからも予約可能だ。