ロードスター・パーティレース、そしてスーパー耐久へ
ロードスター・パーティレースでシリーズランカーに
2016年からはマツダファン・エンデュランス(通称:マツ耐)や、ロードスター・パーティレースでの結果も出始めた。ロードスター・パーティレースでは女性チーム「ラブドライブ」として2016年に東日本・西日本・北日本の3シリーズすべてにエントリー。北日本シリーズではランキング2位につけるなど好成績を残す。しかし、裏側には度重なるミッションの故障と格闘しながら腕を磨いた泥臭い努力があった。
「当時のロードスターは年次改良前のモデルイヤーだったので、ミッションが壊れやすかったんです。S字コーナーで無理やり3速にシフトアップして3回もミッションを壊しました」。
NAロードスターでの個人練習、パーティレース車両での猛練習で、岩岡選手は自身の武器となるブレーキングを身に付けた。セッティングと本番の踏み込みを綿密に詰めていき、タイムを伸ばす制動を体得。VITAに乗るようになってからは、ブレーキバランスもメカニックと共に突き詰めるようになったという。
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国内最高峰レースへの参戦
ラブドライブは活動範囲を広げ、2017年にはスーパー耐久ST-5クラスへロードスターで参戦し始めた。レース活動2年目での参戦となったため、プロも多く参戦するスーパー耐久の場に翻弄されることになる。
「最初は右も左もわからず、サーキットを走っている他の方に迷惑をかけないかとおっかなびっくりでした。同時にその怖さが反骨精神を呼び起こしたのか、とにかく自分のスティントをこなそうと必死で走りました」。
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当時岩岡選手を悩ませたのはスリックタイヤだった。熱が入りづらい一方、温まってからは強烈なグリップを発揮するという特性が恐怖の原因だった。
「スリックに慣れるため、スーパー耐久車両にラジアルタイヤを履かせたり、反対にパーティレース車両にスリックタイヤを履かせたりして練習しました。練習の甲斐もあって2018年のもてぎラウンドではAドライバー予選でST-5クラスのトップタイムを記録。当時は若くて速いAドライバーも多かったため、タイムで勝てたことがとても嬉しかったです。」。
2018年当時は2025年現在とレギュレーションが異なり、Aドライバーに40歳以下の選手が登録することもできた。岩岡選手は今でも、予選が自分らしさを最も発揮できる舞台として気に入っているという。
悔しさの残る86/BRZ Race
2019年いっぱいでラブドライブを卒業した岩岡選手は、オファーを受けて86/BRZ Race(現:86/BRZ Cup)に参戦した。しかし、ここで思うような結果を出せず、さらに冷たい言葉が追い打ちをかけた。
「チームの監督からも『わざわざ女がレースに出てくるな』とも言われ、自分を認めてもらえないことに困り果てました。FT86のカップカーはスーパー耐久仕様のロードスターよりも少しストレートが速いくらいで、足回りの動きも良く、自分としては”乗れている”感覚はありました。それだけに応援してくれている方に成長した姿を見せられないことが辛かったです」。
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スーパー耐久とKYOJOでの表彰台を目指す
2022年からフル参戦しているKYOJO-CUPと、2024年から参戦を再開したスーパー耐久が岩岡選手の主戦場だ。
「目指すは両レースの表彰台です。KYOJOは年々レベルが上がっていて、予選タイム1秒以内にトップ10人以上が入っているような世界。自分がレベルアップしても、周りが必ず速くなっています。その難しさが、私に火をつけてくれている感じがします。
また、女同士で一歩引かないので、最初の頃は『危なすぎる』と言われていましたが、関谷正徳さんが安全なバトルの講習などをしてくれたことで、クリーンなバトルができるようになりました。今では『KYOJOが一番面白い』と言ってくれる方もいるのが嬉しいですね。
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スーパー耐久には、スプリントレースにはない極限状態が醍醐味です。特に24時間レースは、マシンも人間も極限まで追い込まれます。ドライバーとメカニックの繋がりが結果に出るという世界が楽しいです」。
岩岡選手はレースの世界に飛び込むことで「かっこいい」という憧れが「楽しい」という感動に変わり、「勝ちたい」という渇望を抱くようになった。同時にその魅力を発信するため、「モータースポーツは楽しい、クルマで遊ぼう」とRacing School GoTakeのインストラクターも務めている。
人生をかけるほどクルマに熱中し、カテゴリを駆け上がった彼女から直接レースを教えてほしい方は、ぜひレッスンを予約してみてほしい。