大勢の観客が詰めかけるビッグレースには、必ず前座となるサポートレースがある。そのあいだ観客の多くは屋台に行ったり談笑したりして過ごすが、サポートレースも現地観戦の醍醐味のひとつだ。今回はF1のサポートレースも経験した川福健太氏に、代表的なサポートレースと、その魅力を紹介してもらった。
F1のサポートレース
世界最高峰の舞台であるF1のサポートレースには、世界中のラグジュアリーカーやフォーミュラカーが軒を連ねる。その中には参加が夢ではないレースもある。F1と同じ表彰台に上る体験は一生の思い出になるだろう。
ポルシェ・モビール1スーパーカップ/フェラーリ・チャレンジ
ポルシェ・モビール1スーパーカップとフェラーリ・チャレンジは、伝統的にF1のサポートレースを務めてきた由緒あるレースだ。F1のサポートレースになるカテゴリーは単発で終わることが多いが、特にポルシェのワンメイクは長年にわたってその地位を守り続けている。F1だけでなく世界耐久選手権(WEC)などとも併催されている。
ポルシェやフェラーリは、多くのクルマ好きにとって憧れの対象。カウルのある4輪車、いわゆる「ハコ車」のワンメイクレースでは最高峰に位置付けられ、国内外で高い人気を誇る。スポーツカーでレースがしたいと願う人の到達点でもある。
ジェントルマンクラスが設定されていることも特徴だ。ツーリングカーのプロを志す若手と、かねてよりの憧れを叶えたジェントルマンが同じ舞台で戦う。
「私の知人もポルシェカップを目指して、ナンバー付き車両でのレースに参戦し始めました。そこからVITA、V-Granz、F4などジェントルマンを受け入れているカテゴリーに進み、上を目指しています。」
BMW & MINI Racing
BMW & MINI Racing.は、BMW M2CS、MINI JCW Challenge Car、MINI Cooper Sの3車種が混走で競う。同レースでは川福氏が2年連続でシリーズチャンピオンを獲得している。2023年のF1日本GPと併催。これまではFIA F3やTCRシリーズとの併催で、F1のサポートレースは突然の抜擢だった。
「急にF1の前座になることが決まったので、近くで情報を得られた人が運よく出られたレースでした。シリーズの年間3戦以上に参戦することがサポートレース出場の条件だったので、シリーズ参戦を決めました。サポートレースでも優勝し、F1と同じ舞台の表彰台に立つことができました」。
F1と同じ進行の中にドライバーとして関与する経験は一生もの。圧倒的な数の観衆に囲まれて過ごすレースウィークには、実力だけではなく運も必要なようだ。
Formula Regional Japan
Formula Regional Japanは、Super Formula Lightsと並び、かつてのF3に位置する国内のフォーミュラカテゴリーだ。2024年度のF1サポートレースに内定しており、さらなる注目を集めることが期待できる。ステップアップカテゴリーでありながら、FIA F4と同じようにジェントルマン向けのMASTERSクラスが設けられている。2023年にはMASTERSクラスだけでも8名のシリーズエントラントを集めるなど、活気がある。
国内レースのサポートレース
Super Formulaなど国内のビッグレースとの併催には、国産車のワンメイクレースが並ぶ。サポートレースに出場するドライバーには、メインレースへの進出を目指す人も多いという。関係者の目に留まる場所で結果を残す意義は大きい。
ロードスターパーティーレース
全国のロードスター乗りが一堂に会するパーティーレースは、スーパー耐久などと併催されている。若手からジェントルマンまで幅広いドライバー層が参加し、ステップアップの道筋も明確なのが特徴だ。地区とクラスが豊富で、ドライバーにとって参加しやすい環境が整っている。NCクラスであれば、旧型のNCロードスターで参加できる。
「パーティーレースでチャンピオンを獲得したら、マツダのプログラムでスーパー耐久にドライバー参戦できます。そこで優秀な成績を残せば、ワークスドライバーとしてレギュラーシートの座が近づきます。スーパー耐久の前座でありながら、その結果がメインレースのシートに直結するため、真剣度合いが一味違いますね」。
SUPER GTで活躍する堤優威選手や冨林勇佑選手も、ロードスターパーティーレースの出身だ。
ロードスターパーティーレースについてもっと詳しく知りたい方はこちら。
N-ONE OWNERS CUP
N-ONE OWNERS CUPは、富士スピードウェイのホームストレートをフルグリッドにするほど人気のワンメイクレース。川福氏がシリーズチャンピオンを獲得したレースだ。国内トップフォーミュラのSuper Formulaやスーパー耐久などと併催される。軽自動車のカテゴリーだが、セッティングの奥深さやレースの難しさでプロからの評価も高い。
「毎戦誰かしらが横転するし、バトルも熱いのでプロ目線でも面白いです。参戦するとSuper Formulaのフルパスがもらえるので、それ目当てのドライバーも多くいます。私も参戦の際は観戦も楽しんでいます。Super Formulaなどのドライバーからコメントをもらうことも」。
参加型のモータースポーツとして人気を博すN-ONE OWNERS CUPは、見て面白い、出て熱いレースだ。
N-ONE OWNERS CUPについてもっと詳しく知りたい方はこちら。
Yaris Cup
Yaris CupはSuper Formulaやスーパー耐久と併催されるYARISのワンメイクレース。かつてのVitzレースが、モデルチェンジを受けて名称を変えた。東西に二分して開催され、N-ONE OWNERS CUPに負けないエントラントを集めている。フレッシュマンの登竜門にあたり、エンジョイ志向からツーリングカーレースのプロを目指す人までドライバーは多様だ。
「Yaris Cupは昔ながらのフレッシュマンレースです。トップの方にいるチームは、メーカーや販売店が関与していることが多いですね。中盤以降はエンジョイ志向の人が占めています。私は2022年、CVTクラスにスポット参戦して優勝しました。2024年も出場を検討しています」。
Yaris Cupについてもっと詳しく知りたい方はこちら。
サポートレースも楽しい
サポートレースで戦う人々の思いも知ると、目の前のレースの解像度がぐっと高まるだろう。N-ONE OWNERS CUPなど、参入障壁が低いものも多い。ビッグレースのついでに観戦したレースに、次は自分がいるかもしれない。