三上、大急ぎで準備をしてコースイン!
SCでドライバーチェンジをするなんて20年以上振りではありますが、SC明けにはローリングスタートをしなければいけません。そしてこれもまた、20年振りじゃないですか!
”この状況めっちゃヤバいんじゃない?(興奮して武者震い)“ しかし……レインボーコーナーで立ち上がった瞬間、#18から突然「ブルルン!!ドンガラガッシャン!」という巨大な異音が足回りからして、アクセルを踏んでも全く進まなくなってしまいました。
オイルの焼けた匂いと車内に立ちこめる白煙、そしてこの巨大な異音は、誰が見たって明らかな異常事態の発生です。
私「壊れた!前に進まない!!」
PIT「エンジンは掛かってる?」
私「掛かっているけど、オイルの焼けた匂いがする」
無線でピットとやり取りをしつつも、絶望感に苛まれます。
終わった・・・悔しい!
武夫さんが一生懸命作ってくれたマシン。メカニックやスタッフみんなの思い。この開幕戦を、どれだけ楽しみにしてくれていただろう?”ああ、表彰台に上がりたかったな……”悔し過ぎて泣きそうになりました。今まで頑張って来た思いが走馬灯のように流れます。
迅速な救出作業
SC中だったおかげもあってか救出オフィシャルがもの凄い早さで来て、牽引を始めてくれました。そして引かれるまま修理エリアに行くと、そこにはピットから駆け付けてくださっていた大勢のメカニックさん達が……チームは諦めていなかったのです!
メカニックさん達は迅速に原因を究明。修理をしてくださり、#18をレースに復帰させてくれました。トラブルの原因は簡単なことではなく、何と「左後輪のドライブシャフトが折れる」という、人で例えるなら大腿骨骨折です。そんな大トラブルに見舞われながらもレースに戻れるなんて、正に青天の霹靂じゃないですか!
”ああ、何て素晴らしいチームなんだろう……”そう思いながらピットロードを走っている時、今度は車内に異臭が漂って来たため念のためピットイン。大きな問題は無さそうということで、戦列に復帰しました。
レース復帰後の不安
日が傾いてきた菅生のコース上では、他クラスの車両が黒煙やら白煙やら吹いていて、車内には変わるがわる色々な臭いが立ち込めます。また#18もシャフトが折れた際、グリスのオイルがマフラーについてしまい、自分からも臭いを発している模様。常に色々な臭いがし、それが自車か他車か、重大なものなのかそうでないのか、全くわからない状況です。
”もし何かあったらどうしよう?”
そう思うとどうしても走りが守りに入ってしまい、タイムも1分37〜38秒台しか出ないのが、走りながらももどかしく感じます。
しかし、”レースは最後までなにがあるかわからない、こんな状況だからこそ得られる学びもあるハズ”と頭を切り替え、冷静に落ち着くよう自分に言い聞かせながら、今の自分にできる限りのベストを尽くそうと、懸命に前を目指しました。
34周をしたところで武夫さんにバトンタッチ!
”無事に終わった……”初夏を思わせる気温もあって灼熱地獄だった車内から戻り、全身が火照った状態でピットの椅子に腰かけクールダウン。その後着替えに出掛けて戻ると、何とレースが続いているにもかかわらず、18号車がまたピットに入っているじゃないですか!
「何?今度は何が起きたの??」
聞けばなんと、再度ドライブシャフトが折れてしまったとのこと。
やはり迅速な交換により戦列に復帰は果たしましたが、ドライブシャフトが何度も折れることなんて、普通はありません。そして悪いことは重なるもので、ゴール間近で皆が祈るような気持ちでモニターを眺めている前で、またまたピットイン。同じ問題でした。
ゴール直前で、予期せぬ3回目のトラブルに見舞われてしまったのですが、そしてここで、ひとつの大きな問題が浮かび上がって来ました。先ほどまでの状況だったら、修理の一択です。でも今度はゴール間近で、その時間がないのです。
“今から直すと、チェッカーは受けられない”
”しかしこんな状態だと、1周も持たないかもしれない。そうするとリタイヤだ”
”どうする??”
監督の判断で、残り2分のところでコースインすることに決定。僅か一周を走り切れる保証なんて、もちろんありません。一か八かの賭けに出たのです。”神様……力を貸して下さい!”
そして満身創痍の#18は、何とか最終ラップをクリア。6位フィニッシュとなりました。
「これがレース」
本当に、最後の最後までレースは何が起こるのかわからないものです。
そしてこの日もコンビニ弁当と共に溜まった仕事を片付け、温泉に入り眠りにつきました。表彰台に上がったら副社長とホテルの豪華なディナーにする予定でしたが、上がれなかったので・・・有言実行しました(涙)