ジャンルを越えて…レース以外にも多方面で活躍
レーサー鹿島さんの活動は、レースだけにとどまらない。ラジオパーソナリティ、イベントプロデューサー、企業プロジェクト、ヒストリックカー事業、オーケストラの運営など、その内容は多岐にわたる。
「ライフワークとして取り組んでいることがいくつもあります。レースは重要な柱ですが、他のどの仕事も常にアクセル全開以上で取り組んでいます」
その代表的なもののひとつが、ヒストリックカー向けパーツブランド「SYMPHONIC PARTS」だ。往年の名車のパーツを開発・販売するこの事業で、鹿島さんは開発プロデューサー兼テストドライバーをつとめている。
スタートは昨年2025年2月だが、すでに約20年前には構想・企業への提案をしていた。その時は事業化まではいかなかったが、近年は自動車メーカーも復刻パーツ事業に乗り出しており、先見の明があったと言える。
「英米では戦前の車でさえもパーツが意外と作られていて、大切に乗り続けていく文化があります。だから日本でも同じようなことをやりたいという夢が、ずっとあったんです。新しい素材や技術を取り入れたパーツを開発して、未来へ残していきたいと思っています」


未来への思いは音楽にも通じている。幼い頃から楽器が周りにある環境で音楽に親しんできた鹿島さんは、オーケストラのオーナー兼プロデューサーとしても活動しているのだ。医療ドラマの名曲を演奏する「ORCHESTRA POSSIBLE ~音楽は心のくすり~」公演は、その模様を収録した動画が約2000万PVを記録。ドキュメンタリー映画も全国公開されるなど好評を博した。
「近年は素敵なコンサートでも空席が目立つことがあり、また演奏家を目指す人も多くはないようです。そんな状況の中、私自身のやりたいことを通じて、日本でも新たなオーケストラ文化を未来へ残せるといいなと思っています」


話題を呼んだ「神社クレジットカード」
鹿島さんのもとには、新規プロジェクトのプロデュースやブランディングなどの相談も多く寄せられている。
「ありがたいことにいろんな企業やブランドからオファーやご紹介をいただきます。契約の関係で公けにしていないものが多いですが、一つひとつ丁寧に取り組み、育てていっています」
企業とのプロジェクトでよく知られているのが「鹿島神宮カード」だ。寄付の減少など神社が抱える課題に対し、三越伊勢丹グループのエムアイカードと鹿島神宮を結びつけ、年会費や買い物で貯まるポイントを寄付できる日本初の仕組みを実現した。これはメディアでも取り上げられ、大きな反響を呼んだ。
「買い物をするだけで日本文化を守ることにつながる、まったく新しい仕組みです。日本にとって神社は大切な存在。なんとかしなければという思いが原動力でした」
クルマ、音楽、神社…。これらは一見まったく別々の仕事に思えるが、本人の中ではすべて一本の線でつながっている。その根底にあるのは「社会貢献」という考え方、そして「未来へ文化を残したい」という思いだ。
「仕事は社会貢献、というポリシーをずっと持っています。自分のためだけではない、社会が少しでも良くなることにつながる仕事をしたいと考えて続けています」

「レーサー鹿島」とはどんな存在なのか
ジャンルを越えて多方面に活躍する鹿島さん。その肩書はいったい何なのか、また「レーサー鹿島」とはどのような存在なのだろうか。
「ネットではいろんな肩書が出てきますけども、いろんなことをやっているので…。どんな存在かというのも含めて、皆さんに決めていただけたら。逆に聞いてみたいですよね。私がどんな存在なのか、私が知りたいです」
肩書にはこだわらない。自身のポリシーに従い、ジャンルを越えた柔軟さで未来を作り続けている。
レースを始めたい方へ-好きという時点で才能がある
最後に、これからレースを始めたい若い世代や、一度レースを離れて再び挑戦したい人たちへのメッセージをお願いした。
「私は子どもの頃からいろいろなスポーツをやりましたが、練習はせずに試合だけやりたいなと思うものが多かったです。でもモータースポーツに出会ったとき、こんなに練習したくなるスポーツはないと感じました。練習が楽しければ真剣に取り組めるし、一生続けられる。そう思いました」
だからこそ現在も走り続ける一方で、トヨタの「MOTORSPORT by KINTO」でプロデューサー兼チーフインストラクターを務め、多くの人へモータースポーツの楽しさを伝えているのだ。
「車やバイクが好き・運転が好き・速く走ることが好き、この“好き”がある人は、もうその時点で才能があると思っています。でも公道ではその才能を発揮できませんよね。だから安全に思い切り走れて、全開走行するとほめられるサーキットへぜひ来てほしいです。
インストラクターとして、初心者から始めてどんどん速くなっていく生徒さんを何人も見ています。私が長年培ってきた経験も技術も、教えられることは全部伝えていきたいので、皆さん気軽に参加していただきたいです」


文化を未来に伝える伝道師
今回のインタビューでは、15年ぶりにレースへ復帰した私・編集長三上のことにも話が及んだ。
「三上さんのように長いブランクを経て戻ってくる方がいることは、とても印象的でした。本当にレースが好きな人は、どんな環境になっても必ず戻ってきます。車と会話ができる人、チームと会話ができる人は、また必ず走りたくなるんです」
その言葉を聞きながら、モータースポーツは単なる競技ではなく、人生そのものなのだと改めて感じた。
そして「モータースポーツほど練習が楽しいスポーツはない」という言葉には、何十年もの間レースと向き合い続けてきた鹿島さんの人生そのものが詰まっていた。
「仕事=社会貢献」という哲学のもと、モータースポーツだけでなく自動車文化や音楽、日本文化の継承にも力を注ぐ鹿島さん。世界へ挑戦した経験を次世代へ伝え、走り、育てていく。自らの人生を通してモータースポーツの価値を広げ続けている。
その姿は、単なるレーシングドライバーという枠を超え、日本のモータースポーツ文化を未来へつなぐ”伝道師”なのかもしれない。レーサー鹿島さんの挑戦は、これからも続いていく。


