チャンピオンへ続くJLOCとの出会い
速さを見せてリザーブ、レギュラーとステップアップ
2016年の第3戦SUGOラウンドで、元嶋選手とTeam TAISAN SARDはピットが隣になったJLOCの則竹功雄監督と知り合う。
「則竹さんに『お前元気がいいな』と言ってもらい、それ以降『JLOCで走らせてください!』とつきまといました。そうしたら翌2017年にセカンドカーの87号車にリザーブ登録してもらえたんです。第6戦鈴鹿では表彰台に乗ることもでき、2018シーズンで87号車に通年で乗れることが決まりました」。
JLOCは慣例としてドライバーラインナップをGTAの公式発表まで公表しない。元嶋選手は2018年のエントリーリストに自分の名前が佐藤公哉選手と共に登録されている様子を見て、初めてSUPER GTのレギュラードライバーとなったことに胸をなでおろした。
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「2018年は今でも楽しかったシーズンとしてよく仲間との語り草になります。相方の佐藤選手とは相性が良く、レギュラーシーズン1年目から伸び伸びとドライブさせてもらえました。チームも全員が必死で、エースナンバーの88号車に勝つべく燃えていました。
JLOCチームの87号車と88号車は同じ陣営でありながらも、陣営内でお互いのマシンを意識し合うチームでした。反対に各車チーム内の一体感は強く、88号車が王道のスピード作戦で行くなら87号車はタイヤ無交換作戦を採るなど、あの手この手で『エース食い』を狙っていました」。
憧れの先輩と歩き出したJLOC2年目
来年も87号車で戦っていきたいと思って迎えた2018年のシーズン終盤、則竹監督からサプライズが贈られる。「すごいチームメイトを用意しておくぞ」。すごいチームメイトとは誰かと頭の上に「?」を浮かべる元嶋選手の前に現れたのは、GT500チャンピオンの小暮卓史選手だった。
「大スターと組ませてもらえたことに、感謝でいっぱいになりました。確かに平峰一貴選手はKONDO RACINGへ、佐藤さんはつちやエンジニアリングへ移籍するので、88号車には誰が乗るのだろうと思っていました。でもまさかそれが自分と小暮さんだとは。これ以降、僕はJLOCと心中する覚悟が決まりました」。
天然キャラに定評のある小暮選手だが、元嶋選手から見た姿は異なるようだ。
「小暮さんは底なしのいい人なんです。天然な噂は表層的なもの。フォーミュラ・ニッポンでも活躍されていたので難しい方かと思っていましたが、実際は正反対でした。僕が速く走れるように最優先でニュータイヤを履かせてもらえたり、タイヤテストの機会もいただけて、大きく成長できた恩人です。
小暮さんとはケンカもしました。でも僕は小暮さんのスピードセンスが羨ましい。上には上がいます。凡人の僕が小暮さんと組めているのは本当に幸運なことです。それでも成績が残せないもどかしさを共有しながら、二人三脚で初優勝までの長い道のりを走りました」。
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JLOC7年目で掴んだ初優勝
2017年から始まった元嶋選手のJLOC人生は、7年目の終わり、2023年の最終戦でようやく優勝にたどり着く。
「87号車が調子の良い時に88号車の調子が落ちたり、勝てるはずのレースでドライバー交代とタイヤ交換のミスで優勝を逃したりと、もうGTでは勝てないんじゃないかと思うほど優勝までは長かったです」。
悲願の初優勝はチームの目の色を変えたという。
「それまではトップを走っているとチームがみんなソワソワしていました。しかし、初優勝以降は妙な緊張感から解放され、勝つことに集中できるようになりました。地に足をつけて優勝を狙うチームになれたんです」。
初優勝の勢いに乗って開幕する2024年、チームの目標はシリーズチャンピオンに変わった。次回は元嶋選手にシリーズチャンピオンを獲得した2024シーズンを振り返ってもらう。崖っぷちに追い込まれ、3連勝以外にチャンピオンの目がほぼ消えた瞬間、チーム突き動かした原動力とは。
次回:元嶋佑弥が語るGT300チャンピオン獲得の裏側