立ち上がりのライン取りを把握したら、今回はカートの止める・曲げる・走るを効率化する方法をご紹介させていただく。前回に引き続き甲野将哉氏の解説で、強い操作でラップタイムを短縮する方法を見ていこう。
立ち上がり重視のライン取りを忘れずに!
コーナーでガツンと止めてグイっと曲がり、スパーンと立ち上がるのは爽快だが、ライン取りを忘れないようにしよう。ハードブレーキングや素早い加速ができたとしても、ラインを外しているとタイムは大きく損なわれてしまう。今回紹介する素早く、強い入力はラインを守ることが前提になっている。
まずは立ち上がり重視のライン取りを把握して、実際にそのラインで走ってみよう。ラインをトレースするだけなら簡単そうだが、意外と再現性を持って繰り返すのは難しい。
強い入力にチャレンジ
目的は最短時間でコースを回ること。ともすればあらゆる操作を最短時間かつ最小限の手数で終わらせることが重要になる。そのために必要なのが強力な操作、強い入力だ。まずは手数を減らす方から考えてみよう。ポイントはすべての操作を「考えながら」もっと高い速度でできないか試行錯誤することだ。
一発で止めて、ワンアクセルで立ち上がる
強い入力をするときは1回のブレーキングでマシンを止め、1回のアクセルワークでコーナーを脱出することを目指そう。アクセルを加速途中で緩める、ブレーキを離して時間を置いてからハンドルを切るといった動作は、タイムロスを招く。理想は「止める・曲げる・走る」をそれぞれワンアクションで行うことだ。
タイヤにかかる縦と横のエネルギーを理解することで無駄な操作を減らせるだろう。たとえばブレーキング時、タイヤのグリップ力を縦方向に100%使っている状態で旋回にグリップ力を使おうとしてもマシンは曲がってくれない。言葉で表現すれば「止めて、曲げる」という分割された操作が必要になる。
旋回時も修正舵を減らすように走ろう。フルカウンターで駆け抜けるドリフト走法は華やかだが、最速ではない。切り直しや切り増しが必要なのであれば、舵角とタイミングが適切ではないということになる。一回でマシンをコーナー出口の方向に向け、そこからは徐々にステアリングをまっすぐに戻していく動きを意識してみよう。
加速時にもマシンが完全に前方向を向いてからアクセルを踏むわけではない。タイヤの限界を探りながら旋回と加速を両立させたアクセルワークが必要になる。たとえばヘアピンコーナーであれば、加速の序盤から少しずつアクセルを立ち上げていき、コーナー出口で全開になる。
いきなりアクセルを踏み込むと、リアタイヤが滑って修正舵とアクセルの一時的な緩和が必要になる。これはロスだ。アクセルの二度踏みを起こさないで済むポイントを探ろう。
強い入力をしてみよう
ブレーキ、ハンドリング、アクセル。カートでできる操作は基本的にこの3つしかない。
まずはコーナーの入り口では、最短距離でマシンを止めよう。マシンを鋭く止めるにはブレーキを強く踏む必要がある。しかし、何も考えずに踏力いっぱい踏み込めばタイヤがロックし、マシンは簡単にスピンモーションに入ってしまう。ロックしたタイヤは制動力を失うため、ロック寸前が最も制動力の高い状態となる。
トライアンドエラーで限界のブレーキングポイントを探そう。重要なのはやみくもにハードブレーキすることではなく、「ここまではできた、次はこうしてみよう」と、考えながら限界を押し上げていくことだ。タイヤの感覚を掴めてくると、確実な制動が可能になるだろう。
しかし、止めすぎには注意だ。甲野氏がトレーニング中に監督から「ブレーキを使わずに走ってみなさい」と言われて試した結果、タイムはブレーキ使用時と1秒も変わらなかったという。
ハンドリングや立ち上がりのアクセルワークも同様に、グリップの限界を探ることで効率的なコーナリングが可能になる。ハンドルを切ってもマシンが舵角に対して直進方向に進み続けるアンダーステアや、舵角以上にイン側に巻き込むオーバーステアを出して修正舵を入れる動作は、タイヤが「仕事」をしていない時間を生み出してしまう。
運転時に重要なマインドは、意図したとおりにマシンを動かすことだ。ブレーキングと同様に縦横のグリップの感覚を掴めてくると、マシンが狙い通りの方向を向いて加速する舵角とタイミングが見えてくるだろう。
どの操作においても操作のやり直しはロスになる。また、これまでより強い入力をしてスピンやロックなど、望まない動作をしてしまったら何度でも立ち戻って走りを再考しよう。結果的にボトムスピードが落ちてしまっているなら、それも検討すべき課題だ。
たとえばアクセルを踏み込みすぎてスピンモーションに入ってしまい、結果的に二度踏みになってしまったなら、もう少しじわじわとアクセルを踏んでいった方が一回の入力で済むと考えられる。ステアリングを一気に切りすぎてタイヤが追い付いていないなら、もう少し優しく切った方がいい。
突っ込みすぎていないか、はたまた突っ込まなさ過ぎていないか。考えながら走ることで、タイムはどんどん伸びるだろう。
マシンに合わせた走り方をしよう
マシンによって走らせ方は変わる。極端な例を出せば、後輪駆動のカートと4輪駆動のランエボでは走らせ方が違う。レンタルカートやKTといったトルクの細いマシンはコースを目いっぱい使ってボトムスピードを稼ぐ走り方をした方がいい場面が多く、加速力に優れるマシンは小さく回って一気に加速する方が良かったりする。
同じカートでも、ROTAX MAX(内部リンク)やOK(内部リンク)のレーシングカートは爆発的なグリップ力と加速力を持つため、走らせ方が異なる。同じサーキットでも、マシンが変われば走りが変わる。ラインも変わってくるので、サーキットに出向いた際にはぜひ速い人のラインを参考にしてほしい。
次回:複合コーナーの攻略
次回は複合コーナーの攻略をご紹介する。立ち上がり重視のコーナーを攻略できるようになったら、ドライビングの引き出しを増やしていこう。縁石やアンジュレーションのいなし方もあわせて解説していくので、ぜひお読みいただけると幸いだ。