2022年からスーパー耐久シリーズに浅野レーシングサービスのBドライバーとして参戦している伊藤慎之典選手。カートでもSUGO国際西コースで8年間破られていないコースレコードを保持するなど、実力は証明済みだ。過去には「荒療治」と表現するステップアップに加えて、FIA F4や海外での世界大会にも挑戦してきた。SUPER GTを目指す伊藤選手のレースキャリアを聞いた。
レースとの出会い
福島県のサッカー少年だった伊藤選手は、中学2年生のときに父からレース観戦に誘われた。隣の宮城県にあるスポーツランドSUGOで出会ったマシンの音と雰囲気に魅了され、モータースポーツのとりこになったという。
「もともとクルマ好きで動画を見たりしていたのですが、当時はまだ中学生。自分では運転できないことに、さらに興味を掻き立てられました。モータースポーツを始めたのは高校生になってからです。高校時代は平日は部活でサッカー、週末はサーキットという生活を送っていました」。
両親はともにクルマ好き。SUPER GTの映像を父に見せて「これをやりたい」と相談した。


カートへの挑戦
高校生になった伊藤選手は、父とともに関東圏のサーキットを探してショップを突撃。そしてサッカーで鍛えた体力を活かして、週末に走り込むようになった。
「チェッカーが出るまで一度もピットに戻ってこないことが当たり前でした。楽しさが勝っていたので、20分の走行セッションを走りっぱなしです。チームの代表にも『よくずっと走っていられるね』と言われました」。
荒療治のステップアップ
カートに乗り始めて2年目、高校2年生からはレースへの挑戦が始まった。最初は仲間の勧めを受けて、イタコモータースポーツパーク(現:クイック潮来)で開催されていたKTのSSクラスに出場。「楽しい!」。1年52週のうち、年末年始以外の50週はカートへ乗るようになった。
「最初はシート合わせもせずその場にあるカートに乗っていたので、1年で2回あばら骨を折ったりしました。周りのドライバーはみな年下。早く彼らのステップアップに追いつく必要があったので、強引にカートのカテゴリーを上げていき、高校3年生の時にFS125クラスで全日本選手権に挑戦。
FS125クラスで3年間走った後は、カートの最上位カテゴリーであるOKクラスの全日本選手権に出場しました」。


高校から大学にかけてのカートキャリアでもっとも思い出深いレースは、2018年と2019年に参戦したミッションカートの世界大会「ROK Cup International Final」だ。伊藤選手は初めての海外遠征で日本人勢トップタイムを記録して決勝に進出した。
「日本語がない環境でレースをする体験自体が新鮮でした。Division 2のレースで表彰台を獲得したROKのShifterには今でも乗っています」。