JAF公認レースに出場する際に必要となるFIA公認のレーシングギア。決して安い買い物ではないので長く愛用できる製品を選びたい。
私もつい先日に8年ぶりにレーシンググローブを買い替えた。レーシンググローブに3万円以上のお金をかけたのははじめてだったのだが、レースウィークの3日間ほど使用した感想は”不満”のひとこと。正確に言うとグローブの性能が高すぎて持て余してしまったといったところか。
この記事では、私が最近買い替えたレーシンググローブを紹介するとともに、レーシンググローブを選ぶ時に気をつけて欲しいポイントをご紹介する。購入時の参考にしてもらいたい。
FIA公認の失効で止む無く買い替えることに・・・
去年から今年にかけてFIA公認の失効が相次いでいる。レーシンググローブのFIA公認規格は大きく3つ存在するのだが・・・
- FIA 8856-2018
- FIA 8856-2000 (2016年以降に製造された製品)
- FIA 8856-2000 (2015年以前に製造された製品)
このうち③に該当していた場合、FIA公認が2023年末で失効してしまっている。残念ながら私が8年以上愛用したレーシンググローブもFIA公認が失効してしまい止む無く替える事になってしまった。
新旧のFIA規格にはどれほどの違いがあるのか?
いま買い替えるのであれば、最新のFIA規格FIA8856-2018に買い替えるのが妥当だろうが、新旧の規格でどれほどの性能差があるのか?こう考えてしまうのは私が貧乏性だからだろう。性能に違いが無いならば安価な形落ちモデルも選択肢に入ってくるからだ。
FIAのホームページで見つけた新旧の規格基準書を、翻訳機にかけて読み比べたところ。レーシンググローブは新規格になって大きく性能アップを果たしたようだ。
具体的には耐熱試験の性能が向上している。炎に晒された時のグローブ内部の温度上昇が旧規格に比べて18%ほど抑えることができるようだ。 火災時の車両からの脱出を想像してみてほしい。炎に晒された金属部品は高温となっており素手で触る事は不可能。レーシンググローブを介してそれらの金属部品を触りながら脱出することになる。この18%の性能向上が生存確率に大きく寄与することは間違いない。
スパルコ ARROW(アロウ)の紹介
私が今回購入したレーシンググローブはスパルコ製のARROW(アロウ)というモデル。価格は3万3千円とレーシンググローブの価格相場からは高額な分類になる。

装着感
装着感は文句なしに良い!はじめて立体縫製タイプのレーシンググローブを使ったのだけど、とにかく着け心地が良い。指を開いても握りこぶしにしても布の突っ張りがなくストレスが無い。布地も新規格用の厚いタイプになっているが、それによるストレスも無い。さらに滑り止めが薄いものになっているので、ステアリングからのインフォメーションも感じとりやすくなっている。

滑り止め
レーシンググローブで一番気になるところは滑り止めだろう。ARROWも最近のモデルらしく強力な滑り止め加工がされている。シリコン材とは少し違うカラーリングされたゴムのような滑り止めが掌の要所に配置されている。カタログには「HDXフラットグリップ」と紹介されている。これが強力にステリングを掴み取る。
ただし、これは好みがわかれる所だろう。私にとってはグリップが強すぎた。私が主にドライブするVITAは、パワステレスだがステアリングが重いと感じたことはない。これほど強力な滑り止めは必要無かったというわけだ。その他に親指と人差し指にはタッチパネルに反応する材質が使われているらしいが、私のVITAにはタッチパネルは搭載されていないので、その真価が発揮されることは無かった。

耐久性
強力な滑り止めが装着されているので耐久性に関しては購入前から懸念があった。滑り止め材は接着されているため強い力がかかれば当然剥がれてくる。 レースウィーク3日間ほど使用した結果、予想通りほんの一部ではあるが滑り止め材が剥がれ落ちていた。頻繁に使用する人だと1年持たないのではないだろうか?というのが使ってみた印象。1年に一回は必ず買い替える人向けの製品のように感じる。

親指部のみ内縫い
レーシンググローブは外縫いが好まれる。ステアリングフィールを敏感にするために、指と布地の隙間やズレを極力無くしたいからだろうが、内縫いには内縫いの良さがある。それは縫い目が内側にいることでクッション性が生まれることだ。特に親指の外側はステリングスポークに引っかける事もあり、よく擦れるところ。ここにクッション性を持たせるために内縫いにしているのは工夫が感じられて良いなと思ったポイント。

ステアリングへの攻撃性
これが一番驚いた事だった。強力な滑り止めがステリング表面をボロボロにしてしまったのだ。表面といってもステリングに巻いていた滑り止めテープがボロボロになっただけなのだが、これまで使っていたグローブでは経験のなかったことだった。 テープを巻いていなければステリング本体の表面がボロボロになっていたかもしれない。起毛タイプのステリングもおそらくツルツルになっていただろうし、合皮タイプも長く使うと表面は傷むのでは無いかと思う。このグローブを使う時は、滑り止めテープなどを巻いてステアリング表面を保護する工夫が必要なようだ。

スパルコ ARROW(アロウ)レビューまとめ
スパルコ ARROW(アロウ)はクルマを操作するための性能は抜群に良いグローブだろう。ただし、強力な滑り止め性能と引き換えに耐久性には懸念が残る。さらにステアリング表面を傷めるリスクがあるため、長く愛用するためには工夫が必要だろう。長く愛用できるグローブを求めていた私としては不満と不安の残る買い物となってしまった。
逆に短命でも構わないからレースでより上位を目指すドライバーには、これ以上ない武器になってくれることと思う。ひょっとすると先日の筑波サーキットで行われたVITAのレースで私が表彰台に上がれたのはこのグローブのおかげだったのかもしれない。