125ccの水冷2ストロークエンジン「X30」を使うX30クラス・FS125クラスは、100ccのKTエンジンを卒業したドライバーが次に足を踏み入れるカテゴリーだ。16,000回転で30馬力を出力するエンジンの最高速は120km/h。
「カートのF1」と呼ばれるOKクラスと入門用であるKTクラスの間に位置するX30は、プロを目指す若武者がしのぎを削る激戦区だ。今回はVITAワンメイクレース等で活躍中の坂上真海氏に、X30クラスの世界を語ってもらった。
X30/FS125クラスとは
イタリア・IAME社のX30エンジンを搭載するカートは最高速110km/h以上、KTクラスと比べて20km/h近く高く、ハイグリップなタイヤを装着して争われる。地方選手権では「X30クラス」、全日本選手権では「FS125クラス」と呼称される。
国内のX30レースは、エンジンは無改造X30のワンメイク、タイヤもダンロップのワンメイクになっている。
中高生の激戦区
カテゴリーは世界基準で統一されており、地方で結果を出せば全国へ、全日本選手権で結果を出せば世界選手権へと道が続いている。規定上は13歳から出場が可能。レースでは血気盛んな中高生が火花を散らしている。
最速でフォーミュラ(Super-FJ)に参入するためには15歳で限定Aライセンスを取得する必要がある。限定ライセンスの交付条件は全日本選手権のFS125クラスで年間総合順位が6位以内、もしくはFP-3部門で年間2位以内に入ること。
つまり13歳でX30デビューし、14歳で6位以内に食い込めば、翌年にはフォーミュラへ飛び立つことができる。デビューイヤーで結果を出せば関係者の目にも留まりやすい。
「小学生時代からX30を練習し、13歳を迎えたらデビュー、フォーミュラを目指す人が増えています。私が参戦していた2010年頃は中学3年生以上が参戦するのが一般的でしたが、最近は低年齢化が進んでいます」
年齢には上限が存在しないので、実質的に無差別級1本というクラス構造だ。レースに出場するのは頂点を目指す若者と、それと勝負して腕を試したいジェントルマンだ。

エンジン性能緒元(X30 SENIOR)
正式名称 | X30 SENIOR |
排気量 | 125cc(単気筒) |
冷却方式 | 水冷 |
最高速 | 120km/h(実測) (鈴鹿サーキット国際南コース) |
回転数 | 16,000rpm |
最高出力 | 30hp |
税込価格 | 約45万円 |
国内で開催されているカテゴリー
X30 クラス
シニアクラスはフルスペックのX30 SENIORエンジンを用いて争われる。2023年はモビリティリゾートもてぎ、鈴鹿サーキット、オートパラダイス御殿場、新東京サーキットで地方選手権が開催されている。
IWF23
IAMEが主催するX30の世界選手権。2023年はポルトガルのアルガルヴェ国際カートサーキットで開催された。IAMEのシリーズ戦はベネルクス(ベルギー・オランダ・ルクセンブルグ)・イタリア・ギリシャなど各国で開催されており、各シリーズの上位ランカーと世界のX30乗りが集まる。
日本からも各サーキットから選抜選手の代表が出場、X30の世界一が決まる。Junior部門では関口雄飛選手の息子である関口瞬選手が出場する。
FS125全日本選手権
2023年の全日本選手権はCIK部門が全4戦8レース、JAF部門が全5戦10レースに分けて開催される。JAF部門はJUNIORエンジン、CIK部門はフルスペックのSENIORエンジンを用いて争われる。全日本選手権の上位ランカーは4輪競技の限定ライセンスを取得することができ、毎年フォーミュラードライバーを輩出している。
「昨今の潮流として、さらに上位のカートカテゴリーであるOKクラスよりも、4輪に転向するドライバーが増えています。最近はフォーミュラデビューする年齢が下がってきているので、ライバルに対して4輪キャリアで差をつけたい人が増えていると言えるでしょう」