都心から1時間半というアクセスで1周2kmのテクニカルな筑波サーキットは、スポーツ走行のトライアンドエラーを重ねる絶好の場だ。60秒以下でラップすることは「分切り」と呼ばれ、長年ドライバーやマシンの速さを推しはかる指標になっており、日本一タイムアタックが盛り上がるサーキットでもある。レースも公認から草レースまで幅広く開催され、TC1000とジムカーナ場も併設。50年以上にわたって多くのドライバーから愛されてきた。今回はRacing School GoTakeインストラクター川福健太氏のSuper FJが59秒台で走行する車載映像を用いて「筑波走り」を解説していく。
1コーナー
1コーナーはブレーキングにかけて緩い上り坂になっている。フルブレーキをすると思っているより止まるので、コースアウトしない範囲でブレーキングを遅らせてクリップにつけるポイントを探ろう。


1コーナーは長い。クルマを止めるべきポイントは、一般的なコーナーより奥側だ。あまり手前でクルマを止めてしまうと、インについたままアクセルを開けない時間が長くなり、タイムをロスする。奥までブレーキで突っ込み、一気に向きを変えてクリップに点で触れるようにアウト・イン・アウトで走ろう。


イン側の縁石に乗るとマシンの姿勢が乱れやすい。縁石スレスレに一瞬立ち寄るイメージだ。立ち上がりではアクセル全開になるが、脱輪に注意しよう。ランオフがないので、脱輪してタイヤをダートに落とすとトラクションがかからずロスになる。
第1ヘアピン
1コーナーを立ち上がったら、コース中央付近までマシンを振り、シケインは直線的に抜ける準備をしよう。シケイン1個目は縁石を踏みながらしっかりインに寄せ、振り返しで2個目に向かう。シケイン2個目の縁石に乗りながら第1ヘアピンに向けてのブレーキングが始まるので、ブレーキ前にハンドルはまっすぐに戻しておこう。


第1ヘアピンはいわゆる筑波走りの使いどころだ。ラインは一般的なアウト・イン・アウトではない。縁石の上でノーズをクリップに向けてブレーキング、クリップはゾーンで取ろう。バンクを使いながらインを舐めるように旋回したらコンパクトに立ちあがろう。


コース幅を目一杯使って立ち上がりたくなるが、短いストレートの先に待ち構えるダンロップコーナーを見据え、アウト側の縁石を使わないくらいのラインで立ち上がるのが理想だ。特にハイパワー車の場合、コース幅を目一杯使ってしまうと、ダンロップコーナーへの侵入が辛くなる。


ダンロップコーナー/80R
名物のアーチがある高速コーナーのダンロップコーナー。進入でコース幅を目一杯使おう。余裕があれば進入前のコース左端にある小さなランオフも使って攻略すると、よりコース幅を広く使える。アウト・イン・アウトで瞬間的にクリップに触れ、第1ヘアピンのようにコンパクトに立ちあがろう。


ダンロップコーナーを抜けた先にある80Rから第2ヘアピンに向けては全開区間。ここでスピードを稼ぐために、第1ヘアピンからのライン取りを組み立ててきた。ダンロップコーナーを立ち上がったら、クルマ1台分弱だけ右に振ってから80Rのクリップを通ろう。


80Rで意識すべきは第2ヘアピンまでのストレートスピードだ。マシンのパワーと旋回能力に応じてコース幅の使い方を調整しよう。ロードスターなど、小回りが効く低パワー車の場合はインベタで脱出すれば距離損も回避できる。
第2ヘアピン
第2ヘアピンも、筑波走りの使いどころだ。コーナーが長いので、手前でクリップについてしまうと、アクセルを開くまでの時間が長くなってロスが発生する。コース幅を目一杯使ってアウト・イン・アウトするのではなく、バンクを活用したコーナリングを行おう。
コース中央付近から、イン側の縁石にノーズを向けてブレーキングを開始する。ブレーキを終えるのはコーナーの途中。コーナー中央付近までは、クルマ1台分ほどイン側の縁石とスペースを開けておき、コーナー後半から脱出までクリップをゾーンで取ろう。


クリップについたらアクセルオン。しかし旋回は続いているため、一気にアクセルを踏むとFF車であればアンダーステア、FR車であればオーバーステアが出やすい。じわじわとアクセルを踏み足して加速しよう。立ち上がりではアウト側の縁石も目一杯使おう。

筑波サーキットで最も長い直線のバックストレートに向けて脱出速度を稼げると、タイムが大きく伸びる。立ち上がり重視のラインを取るためにも、クリップには進入前に見える位置よりも奥で触れるようにしよう。
最終コーナー
今回紹介するラインは2回クリップを取る走り方だ。進入時のイメージはアウト・イン・アウト。ポイントは、ブレーキングしながらオーバースピード気味にインへ突っ込んでいくこと。1回目のクリップは、最終コーナー入り口付近、縁石が始まる前だ。


クリップに触れたら一度インを離れる。アクセルを離したままマシン1台分インを開けたら、再度ハンドルを切り足して2回目のクリップへ向かう。2回目のクリップに触れたタイミングから加速を始め、出口の縁石も目一杯使うように加速していこう。


脱出ではコース幅を目一杯使った方が速いが、4脱(4輪脱輪)に注意だ。筑波サーキットはアウト側の縁石やランオフが狭く、4脱して速く走れるコーナーはほとんどないが、最終コーナーは例外。予選アタックやレースでは、最終コーナーでの4脱でペナルティを受ける場合が多い。

最終コーナーにはもうひとつラインが存在する。全体をひとつのコーナリングで構成し、脱出手前で1回だけクリップを取る走り方だ。最終コーナーは筑波サーキットの中でも随一の難度を誇る。どちらの走り方が自分のドライビングに合っているか、走りながら答えを出してほしい。
目指せ筑波分切り!
以上が筑波サーキットの各コーナー攻略だ。全長約2kmと短いサーキットではあるが、多くのコーナーが複合コーナーの要素を持っているため攻略が難しい。あちらを立てればこちらが立たずという構造が生まれやすく、コース全体を俯瞰したライン取りが必要になる。
クルマ好きの仲間と話していて「筑波何秒?」と聞かれたときに「ごじゅう…」と言い始めると周囲は「おっ?」というリアクションをするはずだ。