日本モータースポーツの裾野を広げる
田畑氏とレースとの向き合い方は等身大だ。借金だらけになって、人を蹴落としてまでレースに人生を賭ける生き方ではなかった。守るべき生活がある人にも可能なスタンスだ。
「長くモータースポーツを続ける秘訣は裏切らないこと。それから出しゃばりすぎない。レースを続けていくには人間関係が大切なので、素直さと押し引きのメリハリが必要だと思います」。
現在55歳。今からGT500を狙う年齢ではないと本人も自覚している。がむしゃらにチャンピオンを目指すことだけがレーサーのあり方ではない。クルマとレースを愛する一人として、田畑氏は日本モータースポーツの裾野を広げ、技術をボトムアップさせる道を選んだ。
初めてのレース車両を売ってくれた竹内氏が新しい事業、86RACER’Sを立ち上げたと聞いて頼み込んだのだ。「お金はいりません。その事業を手伝わせてください!」。
「ここで仕事をしていると、自分の身になるノウハウが積み上がります。それにお客さんの指導やマシンの運転など、いろいろなチャンスが巡ってくる。僕はそんなチャンスを活かしてこれからもレースに関わっていきたい」
田畑氏は現在、86RACER’Sで竹内氏とともにスポーツ走行のコーチングを行っている。「竹内さんの方が僕より速いし、技術的なコーチングも細かくできます。僕は代わりにドライバーの心へ訴える。頭で技術を理解しても、メンタルが追いついていないとそれを再現できません。怖い、不安、わからない、そんな『踏み切れない理由』を取り払ってドライバーの限界を引き出すのが僕の役割かと思っています」。
サーキットに行けば、正直で熱いアドバイスを受けられるだろう。
田畑勇 略歴
年度 | レース | 戦績 | チーム・車種 |
---|---|---|---|
1990 | 富士フレッシュマンレース KP61クラス | レースデビュー | ガレージF☆杉本タイヤKP61 |
1992 | 富士フレッシュマンレースAE86フル参戦 | 2勝 シーズン2位 | AE86 |
1993 | N1耐久シリーズ デビュー | クラス4位 | ジャラーナBPカルタス |
2000 | スーパー耐久 デビュー | クラス2位 | PowerMagic RX-7 |
2001 | スーパー耐久 フル参戦 | クラス2位4回 クラス3位1回 | PowerMagic RX-7 |
2002 | スーパー耐久 フル参戦 | クラス3位2回 | PowerMagic RX-7 |
2010 | スーパー耐久 フル参戦 | クラス2位1回 クラス3位1回 | 岡部自動車T-MANオイル Team Tetsuya Z(Z34) |
2012 | 86RACER’S 参加 | FT86 | |
2019 | スーパー耐久第3戦:富士24時間耐久参戦 | クラス6位 | 岡部自動車Z34 |
2021 | スーパー耐久第3戦:富士24時間耐久参戦 | クラス3位 | 岡部自動車レカロZルーニースポーツ |