事件が発生
丁度持ち時間の半分が過ぎた頃でしょうか。富士の名物コーナー100Rで、後方からST-Zクラスの車両が追いついてくるのが見えました。
上のクラスのマシンなので、当然ながらイン側ギリギリに寄って、道を譲ります。しかし左ハンドルのその車両には……ひょっとして私が見えていない?ゆっくりと私の方に寄ってくるじゃないですか!
私のスグ後ろにも車両がいますので、ここでブレーキングで避けることは出来ません。右側にはガードレールしかありませんので、逃げ道もありません。”アクセルを抜いて後ろの車に追突されるか、右にハンドルを切ってガードレールにぶつかるか……”八方塞がりで、「このまま行く」以外の選択肢はありませんので、相手に私が見えている事を祈ります……が、祈りもむなしく、真横からほぼ同じ速度で軽く接触してしまいました。
そこで初めて相手の車両は私の存在に気がついたようです。ビックリしたように左側にハンドルを切ったようで、100Rの外側にはらんでいくのが見えました。恐らく、ぶつかるまで見えなかったのでしょう。これが「スーパー耐久の一番怖いところ」です。幸いなことに接触後もマシンの挙動に変化はありません。かすり傷程度で済んだようで、そのまま走行を続けることが出来たのが、不幸中の幸いでした。
が、初めて「死角」の怖さを知りました。
走行に問題ないとはいえ、どうやったら、あのアクシデントを避けることができたのか?悔しさでいっぱいのまま、でもなんとか頭を切り替えてスティントを続けます。
走りの方はというと、今までできなかったことが決勝レースで突然出来るようになるはずもなく、試行錯誤インストラクターに教えていただいた今までのことを振り返り、トライアンドエラーをひたすら繰り返しましたが、なかなか上手くまとめることが出来ませんでした。そうこうしているうちに無線で指示が入り、ドライバーチェンジ。続く近藤さんに18号車を託しました。
ハブボルト損傷のトラブルが発生
レースはもちろん続きます。私が降りた約2時間後にハブボルトが折れるトラブルが発生し、18号車は急遽ピットイン。10分ほどでコースに戻りましたが、私の接触が原因だった可能性もあり、自分のせいで迷惑をかけたことを再度みんなに謝罪しました。そうではないと言ってくださる方もいましたが、やってはいけないことをやってしまったのは、この私です。謝罪して許されることではありませんが、同じミスを2度としないことが、チームへのせめてもの恩返し。
予定では、私の2回目の走行は夜が明けてからの7:30から。その時は、もっと避けながら走行する!!
24時間耐久レースの目玉といえば「夜間走行」
「ルマン」や「デイトナ」、「ニュルブルクリンク」といった24時間耐久レースでも、夜間走行は見どころの1つです。そしてこの「NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」は名だたる24時間レースの中でも地理的に一番南で開催されるため、「夜が最も長いレース」という話しもあり、チームにとってもドライバーにとっても、本当に過酷な時間帯が延々と続くのです。
昨年はこの時間帯に小動物(タヌキ)が出てきてレースカーとクラッシュ、結果車両が大炎上してしまったり(今年は網をかなり張って、動物類が絶対に入らないように対策をして下さったそうです)、速い車両が下のクラスの車両を抜き切ったと勘違いして、ぶつけてしまった結果全損級のクラッシュが発生し、その影響でガードレールまで損傷して2時間もの赤旗中断があったりと、多数のアクシデントが発生しています。
そんな数々の魔物が潜む「夜の部」はと言いますと、天気予報では曇りの予報でしたが、雨が日付の変わるころに降り始め、そこでST-4クラスが2台単独クラッシュしリタイヤ。我がチームは4位に順位を上げていました。リタイヤしたチームの無念さを思うと、自分のことのように胸が痛みます。
三上、2回目のスティント
さて、これまでにFCY(フルコースイエロー)が10回くらい出ていて、午前7:30から予定されていた私のスティントは、約1時間ほど押しての開始となりました。
マシンはかれこれ、17時間以上もレースを続けている状態。おそらくどの車両も何かしらのトラブルを抱えながら、それでも戦い続けているものと思われます。
我がチームの18号車も例にもれず、途中でギアが渋くなってエンジンの調子もイマイチとのことで、ドライバーチェンジのピットインと同時にエンジンとミッションのオイル交換を行ってから、私にマシンが託されました。
コースイン!スタート時と全く路面状況が変わっていて、マシンの状態ももちろん違います。路面も汚れていて、他のレースカーも戦いの形跡が……具体的には、接触を直した後が多数見られます。”みんな本当に頑張っているんだな……”と、ちょっとウルッと感動しながら走行を続けます。
さて、私の走りですが、「どんな状況でも合わせて乗れるよう、学び、成長したい」という課題を胸に抱きつつ周回を重ねますが……刻々と変わるマシンと路面状況に走りを合わせることができず、「レース自体は楽しみながらも、うまく走れない自分に憤りを感じながら」という複雑な精神状況で約1時間半走行して、伊藤くんにバトンを渡しました。
そして18号車はその後も順調に周回を重ね、4位でチェッカー!上位3チームはノートラブルと快調なまま走行を続けるという、圧勝でした。24時間耐久に参戦した全てのチーム関係者、スタッフ、オフィシャルの皆さん!お疲れ様でした。