軽量FRスポーツカーとして老若男女に愛されるロードスター。1,020kgのオープンカーで争われるロードスター・パーティレースⅢ。初開催の2002年から実に23年目の本レースは、2024年現在最も盛り上がっているワンメイクレースのひとつ。今回はシーズン2024年3月15日スポーツランドSUGOで行われた合同テストを取材。
まず最初にご紹介するのは本レースに特別協賛しているマツダ株式会社、ファクトリーモータースポーツ推進部の小早川 隆浩さん。最初は爽やかな笑顔が印象的でしたが、レースへの思いを語り始めた途端、その眼差しは力強く真剣な表情に変わっていったのが、レースへの熱い思いを強く感じました。では、小早川さんのお話をお聞きください。
ほぼノーマルのロードスターだから面白いんです
ロードスター・パーティレースはマツダの2人乗りスポーツカー「ロードスター」のワンメイクレース。FR車で腕を試せるナンバー付き車両のレースとあって、若者から大ベテランまで、多くのエントリーを集めています。
2022年からはそれまでの北日本、東日本、西日本シリーズに加えてジャパンツアーシリーズも始動。今、もっともアツくなっているワンメイクレースのひとつです。
市販のNR-Aで走る
レースで使われるマシンはどんなクルマですか?
小早川 レースで使用されるマシンはマツダ ロードスターNR-A。現行であるND型ロードスターのレース用車両です。レース用とは言ってもナンバー付きなので、もちろん街乗りもOK。
ほぼノーマルで走るレギュレーションの伝統は長く、NBロードスターで始まった初代パーティレースから20年以上継続しています。チューニングやセッティングはほとんど許されていないので、他のワンメイクレースと比べても、条件の平等性が高いです。
全レース同じ車両性能の競技
どのようなレースが開催されていますか?
小早川 ロードスター・パーティレースⅢでは、北日本、東日本、西日本、ジャパンツアーシリーズの4シリーズを開催。加えて、各レースにジェントルマンを対象としたクラブマンクラスも織り込まれています。クラブマンクラスはシリーズのポイントに含まれませんが、クラブマンにも結構速い人がいますよ。
使用するサスペンションは販売時のビルシュタイン製で、可能なセッティングは車高調の段のみ。足回りがレース仕様に慣れている人からすると大きく動きます。皆さん筑波サーキットの最終コーナーはインリフトしながら曲がります。
レース車両としては柔らかい足回りも相まって、プロがいきなり勝てるわけでもないところがロードスターの奥深さです。
低コストだから初めてのレースにもおすすめ
ロードスター・パーティレースⅢはレギュレーションやルールによって参戦費用が低く抑えられています。
レースにはガレージからマシンを借りて出場することもできますが、自分でレース車両を所有することも可能。車両価格は3,064,600円で、安全装備を装着する必要はありますが、足回りや駆動系統などはノーマル状態なので、レース参加までにかかる費用はかなり抑えられます。
ランニングコストが低いのに本格的
ロードスター・パーティレースⅢはコストが低いと聞きます。どんな特徴がありますか?
小早川 「タイヤがあまり高価ではないラジアルタイヤな上に、クルマの寿命を縮めるチューニングは許可されていないので、ランニングコストが抑えられています。そのため他のレースシリーズと比べて圧倒的にランニングコストが安く、若手でも自分で払えるレベルですね。
とはいえロードスターは軽量なFRスポーツカーなので、きちっとしたレースができます。
レース車両としては低めの車両価格
合同テストの現場には純粋にロードスターの魅力に惹かれてレースに参加している方も多くいました。
自走で移動、愛車で参戦
ロードスター・パーティレースⅢは自走で参加される方も多いんですね。
小早川 最近は自分のクルマで参戦するドライバーが増えてきました。2023年までのロードスター・パーティレースⅢには、1名でも参加が可能でした。2024年からは2人以上での参加が推奨になったのですが、理由はクラッシュしたときなどに対応できる仲間がいる必要があるです。
クラッシュして負傷したり、パニックになったドライバーの代わりに事態を収拾できる人が必要になりました。ほかにも6点式シートベルトは1人では脱着しにくいので、2人いた方が楽ですね。もう一人の方は家族やご友人でも大丈夫ですよ。
あたたかい雰囲気のパドック
ロードスター・パーティレースのパドックに来て最初に驚くのがその雰囲気の良さ。ライバル同士のピリついた空気はなく、皆さんが雑談や意見交換を楽しんでいます。
接触するとノーポイント
ロードスター・パーティレースⅢの雰囲気がいい理由を教えてください。
小早川 ロードスター・パーティレースには、接触してしまったドライバーのポイントが無効になるというレギュレーションがあります。そのため、ぶつけてしまって気まずい、険悪な雰囲気になることが他のレースよりもはるかに少ないです。
横のつながりでアドバイスの交流も
ドライバー同士はどんな交流をしているんですか?
小早川 ドライバー同士はライバルでありながらも、一緒にモータースポーツを楽しむ仲間です。新しいメンバーがドライバーミーティングであいさつすると『わからないことがあるなら何でも聞きなよ』と言う人が何人もいるなど、暖かい雰囲気ですね。
参入障壁が低いこともあって、若手やビギナーの参加も多いことがロードスター・パーティレースⅢの特徴。来るもの拒まずの精神で、マシンに乗っているとき以外は、アドバイスや情報交換が盛んです。
「もっとロードスター・パーティレースを知ってほしい」
ロードスター・パーティレースⅢをどのように認知してほしいですか?
小早川 ロードスター・パーティレースⅢの認知度はまだ86/BRZ CupやYaris Cupに及ばない点があります。しかし、ガレージから他ドライバーまでが新人ドライバーを暖かく迎えてくれるワンメイクカテゴリーなことは大きな魅力だと思います。
シミュレーター出身の若者が大活躍
若手の活躍はいかがでしょうか?
小早川 パーティレースで活躍したドライバーがスーパー耐久などへステップアップすることもありますが、本格的なレーシングカーは乗り味が全く別物。すぐに適応するのは難しそうですが、最近はシミュレーターで素早くマシンに慣れるドライバーが多いそうです。「今日はパーティレース、明日はスーパー耐久」と、違うクルマにアジャストしてしまうんです。
三宅陽大選手などは、ゲーム「グランツーリスモ」出身のドライバー。「マツ耐(マツダファン・エンデュランス)」に出場し、優秀な成績を収め、現在もパーティレースにも引き続き出場しています。
我々みたいなおじさんよりその場に合わせてのレースマネジメントが上手」と言われている若手の活躍にも注目です。