「レースに出てみたい。でも、どんなクルマを用意すればいいのだろう?」モータースポーツに興味を持ったとき、多くの人が最初にぶつかる悩みがこの「車両選び」だと思う。クルマは決して安い買い物ではないし、購入後には維持費、パーツ交換、改造費用、さらには保管場所の確保まで考慮しなければならない。一度購入すれば、簡単に別の車両へ買い替えるというわけにもいかず、慎重な判断が必要だ。だからこそ、自分の目的や技術レベル、生活スタイルに合ったカテゴリーを冷静に見極めることが重要となる。
この記事では、主にアマチュアやクラブマンレースで使われる車両の代表的な4つのカテゴリーを取り上げ、それぞれの特徴、メリット・デメリットを紹介する。これからモータースポーツの世界に足を踏み入れようとしている人にとって、最初の一歩となる「自分にぴったりの一台」と出会うためのヒントになればと思う。
レース車両の主な4カテゴリーとは?
大きく分けると、レース車両には以下の4つのカテゴリーがある。
- 量産車(ナンバーあり)
- 量産車(ナンバーなし)
- フォーミュラーカー
- レーシングカート
それぞれのカテゴリーは、参入ハードル、コスト、運搬方法、保管場所、整備のしやすさなどに大きな違いがある。つまり、自分にとってどのカテゴリーが合っているかを見極めるには、それらの違いをしっかりと理解する必要がある。順番に見ていこう。
量産車(ナンバーあり)の特徴
代表的なレースカテゴリー


特徴1:公道も走れるオールラウンダー
ナンバー付きの量産車は、日常の足とレース活動を一台で兼ねることができる点が最大の魅力である。平日は通勤や買い物に使い、週末にはそのままサーキットに直行できる。サーキット走行会などにも気軽に参加可能。複数台の車を持つのが難しい人にとっては、理想的な選択肢となる。
特徴2:購入しやすく、ローンも利用可能
新車であればディーラーで、予算を抑えるなら中古車店やネットオークションなどでも入手可能である。一般的なマイカーローンが使えるため、資金計画もしやすい。初めてのレース用車両としては、もっとも手に入りやすいカテゴリーといえるだろう。
特徴3:クラッシュのダメージが日常に直結
レースは非日常の世界だが、ナンバー付きの車両では日常との境界が曖昧になる。クラッシュや故障によって自走不能になれば、その後の生活にも影響が出る。修理に時間がかかれば、代車の手配や通勤手段の確保にも頭を悩ませることになる。つまり、レースでのリスクが直接自分の生活に跳ね返ってくるのだ。そのため「絶対に壊せない」という心理的プレッシャーを感じやすくなるカテゴリーである。
量産車(ナンバーなし)の特徴
代表的なレースカテゴリー


特徴1:レースに特化した改造と迫力ある走り
ナンバーを外した車両は、レギュレーションの範囲内で改造が可能になる。ナンバーありの車両と比較すると改造の自由度は高く、「レーシングカーらしさ」が増す。たとえば排気音量の制限が緩くなるため、エンジン音にも迫力があり、走る喜びを強く感じられるのがこのカテゴリーの醍醐味である。
特徴2:税金や保険の負担がほぼゼロ
ナンバーがないということは、車検を受ける義務がなく、自動車税や重量税、自賠責保険の支払いも不要になる。そのため維持コストを大幅に削減できるのがメリットである。トータルコストで見れば、ナンバー付きよりも安く済むケースも少なくない。
特徴3:運搬には積載車が必要
ただし公道を走れないため、サーキットまでの輸送手段を別途確保する必要がある。積載車(トランポ)を自分で用意するか、レンタルするか、ショップやチームに有償で頼むなどの選択肢があるが、いずれにせよ手間と費用は発生する。出発前の積み込みや帰宅後の車両洗浄も必要となり、気軽さは薄れ手間がかかるスタイルとなる。