レース用品通販の老舗モノコレ。運営する有限会社NEOS(本社:京都府京都市)の代表取締役社長は、自身もレーサーである阪直純氏(以降:阪氏)。カートからスーパー耐久まで、さまざまな車両でレース用品を使い倒している阪氏に、今もっともイチオシの商品を教えてもらった。また初心者でも間違えないグッズ選びのポイントも聞いた。
レーサーの選択肢を増やすMonocolle(モノコレ)とは
オンラインを中心にレース用品の輸入販売を行うモノコレは、2004年の発足から実に19年の歴史を誇るECサイトの老舗だ。自社サイトだけでなくamazon・楽天・Yahoo!にもショップを構えるため、日常的な買い物のついでにレース用品を調達できる。
「モノコレの商品はヨーロッパから直輸入しており、他店舗が日本で取り扱っていない商品も多く取り揃えています」。
商品はエントリーからプロ向けまで幅広く、ハイエンド商品はSUPER FORMULAやSUPER GTドライバーなどにも愛用されている。後述するレーシングスーツなどは、素材メーカーとイチから作り上げたオリジナルアイテムだ。
- 大草 りき(SUPER GT)
- 太田 格之進(SUPER GT・SUPER FORMULA)
- 小高 一斗(SUPER GT・SUPER FORMULA)
- 笹原 右京(SUPER GT)
- 佐藤 蓮(SUPER FORMULA)
- 坪井 翔(SUPER GT)
- 牧野 任祐(SUPER GT・SUPER FORMULA)
- 宮田 莉朋(SUPER GT・SUPER FORMULA)
- 他多数
スーツ・グローブ・ヘルメットといった装備品へのペイントや印刷も、同社の得意技だ。受注生産で制作されるオーダーデザインの装備は人気が高く、カートから4輪レースまで幅広い採用例を持つ。
約20年前、阪氏はヴィッツやマーチカップに参戦していた。その時期にレース用品の仕入れ業に着手。「レーサーの選択肢を増やしたいという思いで始めました」。
16歳で渡欧し、F1へと旅立っていくドライバーを自身も戦いながら見てきた阪氏。自らの知見を日本のドライバーに還元すべく、エンジニアとして多くの「モノ」に触れてきた経験を活かして始めた事業だ。
初心者のレース用品選びアドバイス
初心者がレース用品を買おうとして最初にぶつかる壁は「で、どれを買えば自分は満足できるんだ?」だろう。初心者が後悔しないために気を付けるべきポイントを、阪氏に2つ挙げてもらった。
FIA公認か否か
「自分の走行環境に合わせて、FIA公認を取得している商品が必要か否か判断しましょう」。
装備を揃える際は、自分が行いたいスポーツ走行の中で最も安全基準の厳しい競技に合わせれば基本的には問題ない。
FIA公認のアイテムは耐火・耐衝撃性がいずれも最高水準で、さまざまな部分で安全性が高い。あらゆる用途で使うことができるが、その分価格も高くなる。最新のFIA規格は「FIA8856-2018」だ。N-ONE Owner’s Cupなど、JAF公認4輪レースへの出場を視野に入れている人はFIA公認のレーシングギアを買う必要がある。
JAF公認レースで使用できる装備は、走行会やカートでも使える。しかし「4輪競技用のグローブは耐久性でカート用グローブに劣ります」という。
だからひたすらカートで使いたいのであれば、CIK規格を満たすカート用グッズを選んだ方が経済的だ。CIK規格はFIAの下部組織である国際カート連盟が発行する安全基準だ。
認証規格 | 認証団体 | レース用途 |
---|---|---|
CIK | FIA | レーシングカート |
FIA | FIA | 4輪輪競技全般 |
エントリー向けかいきなりハイエンドか
「最初はエントリーモデルを買い、物足りなくなったら上位グレードに買い替える派」と「どうせ物足りなくなるんだから最初にエントリーモデルを買うのは無駄派」のせめぎ合いは、道具を使う以上避けられない。
しかし「最近のエントリーモデルはとても高品質なので、こだわらない限り全く問題なく使えます」と阪氏は説明する。「たとえばブーツのハイエンドモデルはプロテクションを省くことで耐久性を犠牲にしながら軽量化するなど、強いこだわりがある人のものになってきてました」。
ちなみに…と教えてくれたのはヘルメットのサイズ感。「新品のヘルメットは少しきつく感じると思いますが、使用していると内装が馴染んできてフィットするようになりますよ」。採寸したはずなのに買ったばかりのヘルメットがキツい!という人は意外と多いのだという。
画期的なイチオシアイテム
古今東西のレース用品を知り尽くす阪氏に、自身が愛用するイチオシ商品を聞いた。全身をオリジナルデザインでコーディネートできるモノコレの強みを、高品質な製品とクロスオーバーさせている点に注目だ。
Marinaスーツ・グローブ
モノコレがスペインの生地メーカー「マリーナ」と共同開発したUNIC PLUSは、ロゴが入れ放題という画期的なレーシングスーツだ。
「通常は無地のスーツに刺繍するため、ロゴを増やすとコストがかさみます。しかし、UNIC PLUSはスーツの生地に直接印刷するため、いくらロゴを入れても予算が変わりません」。
刺繍では再現の難しい蛍光色も、印刷なので難なく入れられる。予算が足りないと我慢する必要はない。
「すでにカートではご好評いただいており、これからは4輪用FIA公認モデルの採用例を増やしたいと考えています。UNIC PLUSを通してオリジナルスーツの敷居を下げることが目標です」。
UNIC PLUSを生産しているマリーナは、本来レーシングスーツのノウハウがある企業ではなかったという。しかし、その生地作りのクオリティに目をつけた阪氏が開発を依頼し、モノコレと二人三脚で生産にこぎつけた。
同コラボ製品にはグローブもあり、文字通り頭からつま先までオンリーワンの装備をまとうことができる。
インナー
阪氏が自信をもって紹介してくれたインナーが同じくマリーナのM-PLUSだ。気化熱による冷却効果にこだわった天然素材のインナーで、体感温度を約3℃下げられるという。
「化学繊維によくあるチクチク感を覚えることなく着用できます。また、汗の乾燥が早いため、体感気温は着ていない状態よりも涼しくなります。プロからカジュアルレーサーのジェントルマンまで、幅広いドライバーに愛用していただいています」。
OMP ONE EVO XR レーシングシューズ
ONE EVO XRはレース用品大手OMPのフラグシップモデル。最新規格のFIA8856-2018に対応し、GTドライバーにも多くの愛用者がいる。阪氏も愛用するレーシングシューズだ。
「カンガルー革のボディは軽く、しなやかで履き心地が快適。つま先にかけてのラインも幅広に作られているので日本人の足にフィットしやすいことが特徴です。靴ひもはボアタイプなので、カチカチと締め上げることで高いフィット感を出せます」。
スノーボーダーならボアタイプのシューズには馴染みがあるだろう。機械的に脱着操作が可能なので、靴ひもがほどけたり緩む心配がない。
モノコレは同シューズをはじめとしたシューズのカラーカスタムも行っており、先述したマリーナモデルと組み合わせて全身のコーディネートが可能だ。
Alpinestars TECH-1 ZX RACE V4グローブ
「迷ったらこれで間違いありません」と阪氏が太鼓判を押すのが、AlpinestarsのフラグシップモデルTECH-1 ZXシリーズ。その最新モデルがV4だ。
「フィット感とステアリングを選ばない操作性の高さが魅力。外縫い加工のため、グローブの中で指が縫い目に当たりません。また、エントリー向けのグローブにはないシリコンラバーの滑り止めがあり、しっかりとハンドルを握るドライビングに最適です」。
そんなTECH-1 ZXシリーズは長年プロドライバーの愛用者も多いモデルだ。レーサーの手元をつぶさに観察していれば、贔屓にしているドライバーの手元をコピーできるかもしれない。
反対にあえてハンドルが滑った方がいい競技もあるという。「ジムカーナやラリーなど、ハンドルをスルスルと滑らせる競技を行う方には、別のグローブをおすすめする場合もあります」。
最新装備にオリジナリティをトッピングできるモノコレ
モノコレはセレクトショップの枠を出て、生地から新製品を生み出すなど野心的な商品開発を行なっている。他の誰にも真似できない装備でサーキットに出たければ、オーダースーツやヘルメットペイントを検討してみてはいかがだろうか。一枚の生地にさまざまなロゴデザインを取り入れられるマリーナのAIR PLUSスーツは、ブリティッシュのダブルならぬスパニッシュのシングルだ。