モータースポーツはドライバーだけが準備万端でもスターティンググリッドに立つことはできない。マシンをいかにして万全の状態に整えるかも重要となってくる。
プロのレースでは専属のメカニックが整備を行うのが当たり前だが、入門カテゴリーのレースにおいてはその限りではない。自分のマシンを誰が整備するのか。それはドライバーである自分自身が決める必要がある。この記事ではマシンの整備は誰が行うべきなのか?その決め方のポイントをご紹介する。
整備作業ごとの特徴を解説
ひとことで整備と言っても様々な作業内容があり、作業内容によって整備する人へ求める内容も変わってくる。作業内容ごとの特徴を知ることで誰が整備するべきかが見えてくるようになる。まずは作業内容ごとの特徴を解説する。
走行前後の作業
サーキットなどを走行する直前/直後に現地で実施する作業のことで、作業の具体例はタイヤの空気圧調整、ガソリンの補充、タイヤ交換などだ。
マシンを一般公道仕様or運搬仕様からサーキット走行仕様への組み替え&調整を行う作業のことで、作業難易度は低いものが多いが、サーキットなどの現地で実施する必要がある。
メンテナンス
消耗品の交換や各部位の点検などの作業のことで、作業の具体例はオイル・ブレーキパッド・タイヤなどの交換や、締結部位の増し締め/トルクチェック、摺動部のグリス/オイルアップなどがある。
走行頻度や距離に応じて定期的に実施していく作業のことで、最初に作業方法を覚えてしまえば、繰り返しの作業になるため難易度は高く無い。ただし、手間と時間が必要となる。
セッティング
マシンをより良く、より速くするための調整や変更を加える作業のことで、カテゴリーによってはチューニングと呼ぶ場合もある。
作業の具体例は足回りのアライメント・スプリングレート・減衰などの調整、ミッションのギヤ比の変更やエンジンの出力向上など、幅広い作業内容がある。走行した結果から改善内容を考える必要があるため知識と経験が必要となる。
修理
マシンの故障や不調を直す作業のことで、壊れた部品の交換、クラッシュしたときの板金修理、エンジンブローやミッションブローしたときの乗せ換えやオーバーホール、電気系統のトラブル解決などがある。
作業難易度は低いものから超高難易度のものまで幅広くあり、知識・経験・技術のすべてが必要となる。
マシンを整備する作業者(ショップ)の特徴を解説
マシンを誰が整備するのかは、自分で整備するかプロの整備士にお願いするかの2択となる。さらにプロの整備士もショップによって特徴が異なる。作業者(ショップ)ごとの特徴を解説する。
ディーラー or 町の整備工場
走行前後の作業 | メンテナンス | セッティング | 修理 |
不可 | 可 | 作業のみ | 内容次第 |
プロの整備士がいるお店といって、真っ先に思い浮かべるのはカーディーラーや町の整備工場だろう。レース車両でも保安基準に適合しているナンバー付き車両ならば整備してもらうことが可能だ。ただしお願いできる作業内容は限られてくる。
当然、サーキットなどの現地で作業してもらうのは不可能だ。速く走るためのセッティングのノウハウも基本的には持っていないため、お願いできるのは作業のみとなる。修理に関しても内容次第では対応できない、もしくは非常に高額になることがある。
しかし、全国どこにでもショップがあるのは大きな利点だ。頻度の高いメンテナンスだけでも自宅近くのショップにお願いするなどの活用方法がある。
チューニングショップ
走行前後の作業 | メンテナンス | セッティング | 修理 |
不可 | 可 | 可 | 内容次第 |
一般的な整備の他に、改造やカスタムを専門に扱うお店のことをチューニングショップと呼ぶ。特定の車種に特化した整備や改造のノウハウを持っているため、セッティングなどの特殊な作業の相談が可能だ。
中にはモータースポーツに力を注いでいるショップもあるので、整備をお願いするならばモータースポーツに強いチューニングショップを選びたいところだ。
競技専門ショップ
走行前後の作業 | メンテナンス | セッティング | 修理 |
可 | 可 | 可 | 可 |
競技に関連する全てをサポートしてくれるショップが存在する。”レース屋さん”と呼ばれ方をすることもある。レース車両の保管や運搬、サーキットなどの現地で行う整備、メンテナンス、セッティング、修理までの全てをサポートしてくれるショップだ。
ドライバーはドライビングのみに集中できるのが最大の利点だが、価格が高額となる場合が多い
自分で整備する
走行前後の作業 | メンテナンス | セッティング | 修理 |
可 | 本人の技術次第 | 本人の技術次第 | 本人の技術次第 |
レースが好きでクルマが好き、ならば自分のマシンは自分で整備をしたい。そう思うのは自然な思考だと私は思う。もちろんプロの整備士でなくてもレース車両の整備は可能だ。ただし、全くの無知ではさすがに不可能なため、整備の基礎知識は身に着ける必要がある。最初はプロの整備士にお願いしつつ、少しずつ自分のできる作業を増やしていくのが現実的だ。