サーキットでのレース観戦には、現地ならではの楽しみ方がある。レース中のバトル以外にも面白いポイントを知っておけば、サーキットで一日がもっと充実するだろう。そこで今回は、第一線で活躍するドライバーであり、Racing School GoTakeインストラクターの川福健太氏とともに、ビッグレースから地方のワンメイクまで、現地観戦がより楽しめる方法を紹介する。初めての人も観戦ベテラン組も、ぜひ参考にしてほしい。
ビッグレース観戦の一日
日本中・世界中の名ドライバーとマシンが集まり、華々しくショーアップされるビッグレース。「抜いた抜かれた」以外も楽しむために、まずはレースウィークのスケジュールを読み込もう。
一日の行動を組み立てよう
レースウィークは分刻みのスケジュールが組まれており、さまざまなイベントが同時並行で行われる。サーキットは広大だ。すべてのイベントを回れそうでも、移動に手間どったり疲れてきたりして参加できないこともある。お目当てのイベントの場所を把握し、余裕をもって動けるように予定を組み立てよう。
「僕の場合はドライバーに接近できるイベントを重視しています。サイン会やピットウォークなどは、トップドライバーと触れ合える数少ない場所。現地観戦の醍醐味はオフラインの出会いなので、欠かさず回りたいですね」。
2023年以降はコロナ禍の影響が減少し、サーキットでの距離感は縮まっている。極端に距離を取るようなイベントは少なくなり、現地ならではの熱気に触れられる機会が増えた。監督やドライバーのトークショーなどもぜひチェックしてほしい。


見たいものを見られるポイントを事前リサーチ
サッカーや野球観戦とは異なり、サーキットではチケットが許す範囲で自由に移動できる。レースで一番見たい光景が見られる場所を探しておこう。
「たとえば写真が好きな方には、マシンだけがはっきり写って背景が流れているような『流し撮り』に適したポイントがあります。バトルを楽しみたいなら『オーバーテイクポイント』と呼ばれる、追い抜きが発生しやすい場所を探しましょう」。
身も蓋もない話だが、レースの全体像を楽しむのであれば中継の方が適している。カメラが白熱したバトルを追ってくれるし、レース情報もリアルタイムかつ実況付きで把握できる。しかし、目の前を憧れのマシンが駆け抜けていく迫力はサーキットにしかない。
「僕は鈴鹿サーキットのDスタンドが好きです。速いカテゴリのマシンほどS字から逆バンクにかけてのセクションがド迫力。自分の方向に向かって走ってくるところもポイントです」。
サーキットに足を運ぶ以上、自分の好みにマッチした場所は必ずチェックしておきたい。

参加型イベントやアトラクションを楽しもう
「たとえば鈴鹿サーキットやモビリティリゾートもてぎにはアトラクション施設も多く、家族で来場しても十分に楽しめます。レースウィークにはゴーカートなどの体験型アトラクションが開催されることもあります。また富士スピードウェイには古今東西のレーシングカーが展示されたミュージアムがあり、その歴史に触れることも可能です。」


レースウィークは木曜日から日曜日にかけてにぎわう。決勝だけを観に行くのはもったいない。アトラクションやミュージアムなどにも足を運んでみると、観戦の深みが増すだろう。
またサーキットは地方にあることが多い。観光をかねてグルメや近隣の名所に目を向けてもいい。
「サーキットの近くにあるレストラン探しは欠かせませんね。特にSUGO近隣は飲食店が少なく店探しに苦労すると思いますが、近くのとある蕎麦屋はトヨタの豊田章男会長の行きつけだったりします。また、もてぎの近くにある『蘭』というステーキハウスはGTドライバー御用達の名店。観戦の帰りに立ち寄れば気分はトップレーサーです」。
季節ごとのイベントも意識してみよう。もてぎであれば名物の冬花火が観られるかもしれない。観光としても一日を満喫したい。
ビッグレース以外の現地観戦の魅力
ビッグレースとは対照的な、アマチュアドライバーが争うレースにも独自の魅力がある、これらのレースは多彩かつ安価で、フットワーク軽くいろいろなものを見ることに向いている。
未来のスターを探し出そう
アマチュアレーサーなどが参戦する地方レースの醍醐味はなんといっても、未来のスターをショーアップされる前に発見できることだ。F1やSUPER GTなどで活躍するトッププロも、そのキャリアは草レースから始まっている。アマチュア時代を知っていれば、売れっ子アーティストのインディーズ時代のライブに行ったような優越感を得られるだろう。
Super FJやロードスターパーティレースなど、アマチュアドライバーが多く参戦する地方戦に、未来のF1ドライバーが隠れているかもしれない。

近い距離感とコスパの高さ
ビッグレース以外のレースは観客と参戦チームの距離感が近いことが魅力だ。サーキットの入場料だけで観戦はもちろん、パドックに入れたり選手と話せたりする。
「どのチームも観客に対してとてもフレンドリーです。通い詰めて仲が良くなってくると、空き時間にマシンの中を見せてもらえることも。ふらっと立ち寄ったチームのマシンやセッティング風景をじっくり見られるのは魅力ですね」。
レースは国際格式以外のサーキットで行われることも多い。たとえば筑波サーキットの第一ヘアピン外側の観客席最上部で立ち見していれば、コースほぼ全域を見渡せる。また、マシンが自分に向かってブレーキングしてくるので迫力満点。
大きなイベントこそ開催されないが、雰囲気的にも物理的にも近い距離で楽しむことができ、コスパのいいレース体験だ。

サーキットの名物を事前リサーチ
「たとえばSUPER FORMULAの先導車がめちゃくちゃ速い!と話題になったスープラのドライバーは小原康二さんという方です。小原さんはSUGOでさまざまなレースのオフィシャルを行いながら、自身もスーパー耐久に参戦するなど積極的なレース活動を行っています」。
SNSで話題になった小原氏の周りには、ピットウォークでトップドライバー並みの人だかりができるという。小原氏の夢はニュルブルクリンク24時間レースへの出場。若いSuper FJドライバーなどが、彼と記念写真を撮るべくスマホ片手に駆け寄る姿はなんとも微笑ましい。
また、地方のレースはビッグレースほど人を動員しない。ということは帰り道や周辺施設が空いている。そこで、ぜひとも近郊の観光施設をチェックしてほしい。オートポリスであれば近くには温泉が多く湧出している。風呂で一日の疲れを癒すのもいいだろう。