今、サーキットを走ろうか悩んでいる方へ
「自信がない、体力がない。考えたら身体が動きません。反対に、とりあえずやってみると心が動き出します。たとえば最初はインドアカートに乗ってみるといいでしょう。心が少年に戻って笑顔が生まれます。サーキット走行では、そのさらに5倍、10倍の興奮を味わえます。
人間の身体を動かすのは電気信号です。脳から『絶対にできる。絶対に諦めない』という信号を送り続けてください。心が身体を動かすんです。自分を信じられなくなったときが、”それ”を諦めるときです。とはいえ計画性と論理立ても大切です。アインシュタインは『人生は自転車のごとき。バランスを取り、こぎ続ければ倒れない』と言いました。
一度きりの人生です。自分のレーシングスーツに身を包み、ヘルメットを被って『自分はレーサーだ!』という経験は絶対にしてほしい。こんなに面白いスポーツは他にないと思うので、ぜひ人生のバケットリストに入れてください。
タイムが出ずに伸び悩んでいる方へ
上達を目指すようになったら、課題をひとつずつ棚卸して潰していく番です。今はロガーでデータを定量化できる時代。何が悪いか、できればアドバイスしてくれるコーチを付けて練習すればメキメキ速くなるでしょう。練習時は、まず地面に触れているタイヤのことを考えるべきです。
走る前はイメージトレーニング。人は想像した動きしかできません。違うことをすればパニックになります。でも、イメージに合わせて操作し、クルマの動きと自分の感覚をマッチさせていけば再現性が生まれます。一度できるようになったことをイメージできれば、それ以降は簡単に繰り返せます。苦手だったオールージュは、1993年から引退まで全周全開でした。
そして練習はいろいろなコンディションですることをおすすめします。レースをしていればタイヤはグリップダウンします。摩耗したタイヤでもマシンを安定して曲げられるようになっておけば、レースの勝利が近づきます。カート、ダート、レイン、ジムカーナ。種類は問いません。練習を重ねるほどに、身体に感覚が染みつきます。
その瞬間の課題に全神経を集中して、他のことなど頭から追い出してください。集中して少しずつ、少しずつ積み上げていくしかありません。いきなり速く、あるいは強くはなれませんが、子どもが言葉を学ぶように、人は学習できます。夢があるなら自分の人生に投資を続けるしかないんです。戦い、犠牲を払った者だけが見られる景色がそこにはあります」