ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE第3戦『NAPAC富士24時間レース』が5月30日(金)〜6月1日(日)、静岡県の富士スピードウェイで開催されました。過去最多となる60台ものエントリーあった今回のレースに対し、各チームは錚々たるドライバー陣を揃えるなどして臨んだところ、会場となる「富士」には悪天候にもかかわらず5万3千5百人もの観客が詰めかけるという、現時点の今期S耐シリーズ中で最も注目度の高い一戦となりました。
このように“アジアナンバーワンの耐久祭典”に相応しい規模となった今戦に、浅野レーシングサービス WedsSport GR86(18号車)はST-4クラスにエントリー。レースは決勝直前に雷雨によるスタートディレイが発生したのを皮切りに、その後も霧やクラッシュ後のガードレール修復などによる赤旗中断が2回、FCYとSCの連続導入等々かなり荒れた展開となりました。そんな波乱の展開の中、18号車も序盤にミッショントラブルが発生し順位を落としましたが、それでも諦めずチーム全員で一丸となって戦い続けた結果、最終的に486周を走り切り、総合31位/60台中、クラス5位/9台中でチェッカーを受けました。

すべてのドライバーにとって特別な「24時間耐久」
「富士24時間レース」……私(&Race編集長 三上和美)にとってこのレースは、特別な舞台です。現役復帰して3年目。1年目はクラス3位、2年目は4位。そして今回となりますが、やっぱり目指すのは優勝しかありません。だからこそチームとしても個人としても、できる限りの事前準備を行い、この富士に全てをかけて臨みました。


とはいえ「24時間」という時間は、甘くはありません。体力の管理、回復までの時間、暑さ/寒さや睡眠不足との付き合い方等、全てがレースを構成する大事なファクターとなります。そして何よりほんの一瞬の判断ミスで、自分はもとより周囲のドライバーの人生すら左右してしまうのは、どのレースでも変わりません。とにかくノーペナルティー、ノークラッシュ、ノーアクシデントを優先順位の第一に掲げ、サーキットに入りました。
今回のレースには、レギュラー4名(浅野武夫選手(以下、武夫さんもしくは師匠)、伊藤慎之典選手(以下、伊藤くん)、藤原大暉選手(以下、藤原くん))に加えて、Eドライバーに耐久のベテラン芝叔和選手(以下、芝さん)、FドライバーにGT500に参戦する「株式会社サード」を率いる近藤尚史社長という豪華布陣で挑みます。18号車にとっては、最強とも言えるドライバーラインナップです。事実5月8日の公式テストでは、回転数の縛りがある中でも各ドライバーのタイムは安定し、マシンの仕上がりも上々という、非常に良い流れを感じました。

5月28(水)富士スピードウェイスポーツ走行(S耐参加車両)13:00〜
まずは恒例の「エンジン慣らし」から
この日は50分×4セットのスポーツ走行があり、最初に伊藤くんがステアリングを握ることになりました。スタートは6500回転縛り。事前に武夫さんが筑波サーキットで丁寧に慣らしをしてくださっていたので、その続きを担当するかたちです。
GoTakeのインストラクターでもある伊藤くんは、慣らし走行中にもかかわらず2分02秒445を記録。これに関しては“え?なんで?”と、正直びっくりせざるを得ませんでした。慣らしなのに……というか、慣らしでもしっかりと速い。もう意味がわかりません(笑)
次は私の番。でもこの「慣らし走行」というものは、ゆっくり走るので楽だと思われがちですが、実はすごく難しいんです。ストレートではスピードを出しすぎないようにしながらも、指定された回転数まではしっかりと上げていかなくてはなりません。そしてコーナーでは、ある程度の負荷をかけて走らないならないのです。さらにスピードが乗らないからこそ、ブレーキングポイントは当然いつもよりも奥になります。こんな調子なので感覚はズレるし、バランスも崩れます。もう違和感と戦いながらの走行なのです。
それでも“師匠が心を込めて組んでくれたエンジンが、少しでも調子よく走ってくれますように”と、私自身もこれまでの経験すべてを注ぎ込むつもりで、祈るような気持ちで走りました。
途中、メンテナンスも含めて近藤さんに交代。そこから徐々に回転数を上げていきます。マシンは右肩上がりでどんどん良くなっていき、無事に慣らし走行を終えました。
近藤さんも落ち着いた丁寧な走りで、18号車にどんどん馴染んでいるようです。GT500に参戦中のチーム代表者であり、我々のスポンサーでもある近藤さんと私は年齢も近く、そして実はどちらも「AE86好き」。そんな共通点があったこともあり、自然と親近感が湧きます。同じ時代を走ってきた同志。目指すはもちろん表彰台!
少しずつ少しずつ、「今年の24時間」が形になり始めているという実感が湧いて来ます。

