カートでありながら200km/hオーバーの最高速を出し、4輪用のフルサーキットで戦うカテゴリーがある。サーキットカートとも呼ばれるスーパーカートだ。4輪並みのスピードを出しながらも、地上高は一般的なカートと同じ。フォーミュラカー以上の体感速度とダイレクト感で、一部のドライバーから熱狂的な人気を誇っている。
スーパーカートの経験者であり、カートレースで世界選手権にも出場したRacing School GoTakeインストラクター川福健太氏にその魅力を解説してもらった。本記事用に写真をご提供いただいたのは、2024年に岡山国際サーキットで開催された、スーパーカート日本一決定戦・SK2クラス優勝者のSCUDERIA ROSA代表DK Rosa選手。
スーパーカートとは
スーパーカートのレースは岡山国際サーキットや富士スピードウェイなど、全日本規格の4輪用フルサーキットで開催される。多くのカートレースがカート専用サーキットを用いるなか、ここからすでに異なっている。
主催者は日本スーパーカート協会で、4クラス混走。各レース20~30名のエントラントを集めている。
フルサーキットを走るフルカウルのモンスターマシン
フレームむき出しの一般的なカートとは異なり、フレームやタイヤはカウルで覆われており、プロトタイプレーシングカーのような見た目をしている。200kgに満たない軽量マシンは、最上位カテゴリーになるとFIA F4レベルのタイムをたたき出す。比較的ストレートの短いSUGOですら、最高速は約180km/hに達する。カートなので4点式シートベルトなどはなく、コーナリング時の強烈な横Gは体幹で受け止める必要がある。

「カート用サーキットと比べるとストレートが長いので息をつく時間があります。一方でコーナーのRが大きいため、長時間横Gにさらされます。身体への負担は大きく、風圧もあいまって首が持っていかれそうになります」
カウルはFRPやカーボンなどの軽量素材で、モデルによって10万円未満から100万円超まで多様。空力性能の影響が大きい速度域で戦うため、出場者は工夫をこらして性能を高める。昨今はカート業界でも空力の注目が高まっており、その最たる場所がスーパーカートだ。
クラス解説
日本スーパーカート協会は、スーパーカートをSK1からSK4まで4つのカテゴリーに分類している。タイム上の序列はSK1、4、2、3となっており、カテゴリーの数字と速さは必ずしも連動しない。いずれのクラスも前後ディスクブレーキを装備し、ハイグリップタイヤを使ってフルサーキットを走る。
SK1クラス
最上級のSK1クラスに出走するマシンは、2ストローク125cc、4ストローク250ccのエンジンを搭載する。代表的な例として、 2ストロークの場合はホンダ RS125、ヤマハ YZ125、 4ストロークの場合はホンダ NSF250R、ヤマハ YZ250F、カワサキ KX250などが用いられる。
NSFの場合、純正で48psを超えるが、チューニングで50ps以上のマシンも存在し、富士スピードウェイのストレートでは最高速200km/h超に達することもある。
「そのパワーはカートとしては『ヤバい』速度域。初めて命の危険を感じました。また、ドグミッションをハンドクラッチで繋ぐため、始動時にエンストやホイールスピンをしてしまう難しさがあります」
なお、参加状況としては、2023年の日本一決定戦では4台のエントリーにとどまったが、東日本で開催されるレースにはSK1クラスのエントラントが比較的多く集まる傾向がある。
SK2クラス
SK2クラスはヤマハYZ125のエンジンをベースとしたワンメイクのストッククラス。かつては2ストローク125ccまたは4ストローク250ccのエンジン無改造がレギュレーションだったが、現在はYZ125に統一されている。
シャシーやカウルは規定の範囲内で自由に変更可能で、CDIやチャンバー、リードバルブも認められた範囲で社外品に交換できるほか、シリンダーの再メッキやヘッドのデトネリング加工も許可されている。また、ノーマル部品であれば年式違いを組み合わせてクロスミッションを組むことも可能だ。ただし、ピストンやシリンダーのポートの加工は禁止で、キャブレターは純正に限られる。
タイム面では、岡山国際サーキットの公式コースレコードは2017年に神 晴也選手が記録した1分39秒303。非公式では38秒台も確認されている。
SK3クラス
SK3クラスの参加者はSK1、2ほど多くないが、比較的身近なカテゴリーで、3種類の規定が存在する。
一つ目はROTAX MAXエンジンを使用し、エンジンは無改造、タイヤはMOJOタイヤとする、MAXクラス。二つ目はヤマハYZ85(またはYZ80)のエンジンを使用し、こちらもエンジンは無改造で、ダンロップSLタイヤを装着する、YZ85クラス。そして最後が、2ストローク125cc以下のエンジンを自由に選択できるOPENクラスで、遠心クラッチの装着が義務付けられ、タイヤはダンロップSLを使用することになっている。
現在では、このSK3クラスは岡山シリーズ以外にエントラントが存在せず、実質的にはROTAX MAXエンジンを使うMAXクラスだけが稼働している。
SK4クラス
SK4クラスは、ヤマハWR250のエンジンを用いたワンメイクレース。エンジン改造は可能だが、始動方法は変更不可で、フューエルインジェクションは禁止、キャブレター制御に限られる。
スタート方式については「SK4のみスタンディングスタート採用」という誤解も多いが、実際には他クラス同様ローリングスタートが基本。ただし、富士シリーズなど一部の大会では例外的にスタンディングスタートが採用されるケースもある。
魅力
スーパーカートは競技の知名度こそ高くはないが、のめり込んだドライバーを掴んで離さない魅力があるという。
圧倒的なスピードとダイレクト感
スーパーカートはカート離れしたスピードと、カートでしか得られないダイレクトさを両立したカテゴリーだ。その速度はVITAなどのレーシングカーと互角で、タイムはFIA F4に迫る。その操作を電子制御、サスペンション非搭載のカートで行うのだからダイレクト感は抜群。
「その低重心から、体感速度はフォーミュラ以上です。また、レーシングカーがどれだけダイレクトに操作できるといってもサスペンションやデフがある以上、カートを凌駕することはありません。スーパーカートは、最高に直感的な操作を、最高速で行いたい人にとっての到達点です」
