サーキット走行をしていると、おのずとレースに出たくなる。今回はレースに参戦するときの考え方、参戦レースの選び方など、走行会では物足りなくなった方がレースに参戦するために必要な情報を紹介する。これからライバルと競ってみたいと思っている方の参考になれば幸いだ。語り手は草レースから公認レースまで経験している「おかえり」こと岡村英莉選手と、編集長の三上和美。聞き手はアナウンサーの結川愛寿加さん。
レースの参戦費用
結川 レースデビューしたいと思っている過去の自分と話せたら、何を伝えたいですか?
岡村 お金を得る手段を考えておきなさいと伝えますね。最初はスポンサーさんもいないので、行き当たりばったりだと苦労します。私はマシンを貸してくれる方がいるなど恵まれた環境でしたが、それでもサーキット走行からレースにステップアップすると、それまでとは違うお金のかかり方になりました。
三上 私はいきなり4輪レースに出たのですが、レンタルカートなど、もっとお金がかからない方法でレース勘などを磨いておけばよかったと思います。走行会やスポーツ走行では、バトルはマナー的にも不可能。真後ろにつかれても集中力を切らさないメンタルトレーニングなどは、レンタルカートでならできます。


結川 レースの参戦費用はどのくらいが相場でしょうか?
岡村 草レースだと10万円くらいから、公認レース(JAF戦)で20万円くらいからでしょう。レンタルも広がってきているので、費用の相場はコンパクトになってきていると思います。
最初が草レースか公認レースかは、人それぞれだと思います。私の場合は違いもよくわからず、周りから言われて出場した競技が草レースでした。今はネットの情報も増えて、選択肢が見えやすいと思います。


三上 レースを選ぶときには自分の身の丈に合った、最悪マシンが全損しても人生を棒に振らないカテゴリーをおすすめします。まあ私の場合そんな我慢は1年も続かず、クラッシュしたら責任を取れないようなカテゴリーに足を踏み入れてしまったのですが…
私はサーキット走行を始めてすぐのころ、近くのショップにドリフトで使っていた180SXを持ち込んだら、「レースに勝ちたいなら百数十万円かけてエンジンフルチューンだ」と言われました。当時の私は相場やメカの知識がなかったので、それを鵜呑みにしてローンを組んでマシンを預けてしまう直前まで行きました。
私と同じ過ちを繰り返してほしくはないですが、ショップの力を借りずにレースするのも困難です。なのでレースに出るときには、利害関係のない信頼できるショップ、それも複数のショップから助言を得てお金を使ってください。

結川 最近はシミュレーターでコースを覚える人も多いといいます。参戦前にシミュレーターを活用することについてはどう思いますか?
岡村 最近はシミュレーターの性能がとても上がっているんですよね。Gこそ感じないものの、筐体の傾き方やステアリングの重さなどを変えられるので、もはやゲームとはいえない領域に来ています。目線の置き方やコースへの慣熟が進むので、余裕をもって実車での走行に臨めるでしょう。
三上 聞いた話では、小中学生のドライバーがシミュレーターでたくさん練習してからサーキットに来ると、2周目からシミュレーターと同じようにドリフトできてしまうこともあるとか。時代が変わったなと思いました。
岡村 30分から1時間くらい乗っていると、最初は結構フラフラになるくらい疲れますね。

公認レース参戦の基準は
結川 草レースから公認レースにステップアップするときは何を基準にすればいいでしょうか?
三上 私は1年弱草レースに出てから公認レースに移りました。草レースでは、180SXでどんなに頑張っても、ベースの性能差があるGT-Rに勝てないんですよね。
岡村 GT-Rを買うか、腕で勝負するかという判断が迫ったとき、改造範囲が決められていて、技術の差が結果に表れやすい公認レースが魅力的に見えると思います。
私は最初に公認レースを勧められたときに「そんな大それたレースは…」と抵抗感がありました。ですが公認レースにはカジュアルなワンメイクレースも多く、格式がやたらと高いわけではありませんでした。

三上 公認レースはFIAの公認装備が必要なので、お金の準備は大事です。私の場合は装備品を揃えるお金を貯める段階を踏みました。トラックの運転手をしてお金を貯めながら、仕事の隙間に草レースで腕を磨く生活でしたね。
さすがに倒れて入院したので、それ以降は働く時間をコントロールするようになりました(笑)。2000年前後だったので、まだ18歳で免許を取ってからステップアップを目指すアウトローな人も多い時代でしたね。
最初の公認レースはFR車がおすすめ
結川 公認レースに出たいと思った人におすすめのカテゴリーはありますか?
岡村 私はFR車がいいと思います。「止まる、曲がる、進む」というクルマの基礎を体に叩き込めるので、FR車を走らせられれば、FFなどにも応用が利くと思います。私の原点はロードスター・パーティレースで、ロードスターから学んだ走りは今も活きています。
三上 私もロードスター・パーティレースなどのワンメイクレースが最もおすすめです。違うレースに参戦する場合でも、ハンドルを握って人格が変わってクラッシュしても人生を棒に振らないようなクルマを選んでほしいですね。


ちなみに私は筑波サーキットで参戦車両の多いレースからデビューすると決めていたので、AE86のワンメイクレースが最初の公認レースでした。AE86が好きだった上に、レベルの高い場所に身を置けば技術を磨けると思ったからです。
結川 自分の好きなクルマで走るとモチベーションが上がりますよね。
レース選びの際には、みなさんも岡村さんと三上さんの意見を参考にしてみてください!


