首都圏で特に人気の高いカート用サーキット「新東京サーキット」から車で2分ほど走ると、全日本カート選手権で戦った男が経営するカートショップ「Racing Square GEN(以降:RS GEN)」がある。今回は同社社長の安藤玄さんを取材。オーナーになった背景と、ショップを通じて伝えたいカートの喜びを&Race編集長の三上和美が聞いた。
RS GENとは
千葉県市原市にショップを構えるRS GENは2001年開業。レーシングカートの貸し出しやメンテナンスなどを通して、本気でプロを目指す子どもからカジュアルにカート走行を楽しみたい60歳以上のジェントルマンなど、幅広いドライバーの走行を支えている。取扱カートは入門者向けのKTやジュニアカートから、上級者向けのROTAX MAXなどまで幅広い。
安藤 玄がショップを開くまで
三上 ご自身がカートを始めたきっかけは何でしょうか
安藤 中学生時代、千葉のPARCOにカートが飾ってあるのを見たのが最初の出会いです。「これが走れる場所はどこなんだろう」と思いながら高校生になり、原付の免許を取って当時四街道にあった新東京サーキットに行きました。
その日はバイクしか走っていなかったのですが、自分も走りたいという思いが高まり、帰り道にカートショップを訪ねて見積もりをもらいました。すぐに買える額ではなかったのでアルバイトを開始。2年ほどかけて貯めたお金で、高校3年生のときに初めてのカートを買いました。
親の支援を受けずに自力で貯めたのですが、その2年間に走れていればまた別の未来があったかもしれないですね。

三上 どんなレースに出場しましたか?
安藤 ローカルレースからキャリアを始めて、地方選手権、全日本選手権にも出ました。メカニックの技術は働いていたショップの先輩に教わりながら、少しずつ工具を買いそろえ自分ひとりでやっていました。
地方選手権では最上位クラスで何度か優勝しましたが、全日本選手権での優勝にはなかなか届きませんでしたね。全日本選手権にはショップを開く直前の2000年まで参戦していました。

三上 レースに参戦していて、つらいことはありませんでしたか?
結果が出ない、速く走れないときは苦しみますよね。才能にあふれる周囲との差を埋め合わせるために、アドバイスをもらいとにかく走りこみました。
カートは自分との戦いです。ヘルメットをかぶっているから周りと話せるわけでもない。今やっていることとどれだけ向き合えるかという、精神力を鍛えられる魅力があるから続けたのだと思います。
それでも地方選手権のトップカテゴリーで優勝できた時は、カート人生で最高の瞬間でしたね。
三上 ショップを開業した理由を教えていただけますか?
安藤 レースに出ていた頃はカートショップで働いていたので、お客さんに走りを教えることも多くありました。僕が26歳のときに前オーナーが引退することになり、経営を引き継ぐことになったんです。当時はまだRS GENという名前ではありませんでした。
自分で走ったりマシンに触ることはもちろん好きなのですが、教えているお客さんが速くなったり喜んだりしてくれる姿が好きでした。今もその思いは変わらず、「みんなが笑顔でモータースポーツを楽しめる場所」を目指しています。


カートドライバーの年齢層について
三上 RS GENでは主にどのような方がカートに乗っていますか?
安藤 経験値は人それぞれですが、40~50代のジェントルマンが多いですね。上は70歳の方までいます。だから70歳になってもカートに乗れる場所を作っていきたいと思っています。
カートに乗ると若返るんですよ。アドレナリンが出るからか、皆さん本当にイキイキとカートを楽しんでいらっしゃいますね。
速い方は仕事の合間を縫うなどして、毎週乗っています。最初は体力的に厳しかった方も、短い間隔で運転していると体が出来上がってきますよ。

安藤 間隔が空くと体の節々が痛くなります。それを避けるためには、トレーニングしながら走りこむしかありません。速いジェントルマンは有酸素運動なども本気でやっています。個人差はありますが、皆さん必ずタイムにつながっていますね。