ROTAX社の 「MAX」は、カート最速級の120km/h近いトップスピードを発揮するレーシングカート。タイヤのグリップも強烈で、当サイトの編集長はその横Gで肋骨に何度かヒビを入れたほどだ。世界中でレースが盛んに開催され、F1を目指す若者の登竜門となっている。同時に現役のF1ドライバーもトレーニングに愛用する超本格派だ。ハイスペックな一方、1年を通してオーバーホールせずに乗り倒せるほどメンテナンスフリー。年代別の全国大会や世界大会も盛り上がりを見せており、今もっともホットなカートと言えるだろう。今回は中学生時代からROTAX MAX CHALLENGEに出場していた、KYOJOレーサーの坂上真海氏にその魅力を聞いた。
30馬力のパワフルなエンジン
ROTAX MAXは、オーストリアのROTAX社が販売するカート用エンジンの名称だ。国内では株式会社栄光が輸入・販売を統括している。
ROTAX MAXの概要
125ccの水冷単気筒エンジンは全日本カート選手権のFS-125クラスなどで使われるX30と同等のパワーを発揮する。最も一般的なエンジンはROTAX MAX EVO。全国のサーキットで無改造のROTAX MAXを搭載したカートを用いる「MAX CHALLENGE」が開催されている。
ROTAX MAX搭載カートはタイヤもハイグリップ。身体への負荷が高く、初心者がいきなり乗れば負傷のリスクも高い。しかし入門用カートのKTと比べハイレベルな加減速や旋回にとりつかれたドライバーは多い。
エンジン性能緒元
正式名称 | ROTAX MAX EVO |
排気量 | 125cc(単気筒) |
冷却方式 | 水冷 |
最高速 | 110km/h以上 |
回転数 | 14,000rpm |
出力 | 30hp/11,500rpm・ 21Nm/9,000rpm |
税込価格 | 450,000円 |
開催レース
ROTAX MAXのレースは全国のサーキットで開催されている。特に盛んなのは鈴鹿サーキット国際南コース・フェスティカ瑞浪・オートパラダイス御殿場(APG)だ。
「フェスティカ瑞浪とAPGはコーナーが多く、体力的な負荷が高め。初めて走る方はストレートの長い鈴鹿がおすすめです」。
国内で開催されているクラス
対象年齢 | 重量制限 | |
125 Micro MAX¹ | 8歳~13歳 | 105kg~ |
125 Mini MAX¹ | 10歳~13歳 | 115kg~ |
125 Junior MAX¹ | 12~14歳 | 145kg~ |
125 Senior MAX | 14歳~ | 160kg~ |
125 MAX Masters | 32歳~ | 165kg~ |
¹専用エンジンを使用
レースのピラミッド
MAX CHALLENGE | 各サーキットで開催 |
MAX FESTIVAL | GRAND FINALS出場者決定 |
MAX GRAND FINALS | 世界一決定戦 |
ジェントルマンのカムバック先としても魅力MAX
レースは世界統一規格で行われているため、速さを見せることができれば世界選手権も夢ではない。多くのドライバーを引き付ける魅力は、コストパフォーマンスの高さと競技の盛り上がりっぷりだ。
高いコストパフォーマンス
エンジン単品450,000円という価格は決して安い絶対値ではない。しかし1年間を通してメンテナンスフリーに走り続けられる堅牢さと競技レベルの高さを加味したとたん、コストパフォーマンスは跳ね上がる。
「たとえば入門カートのKTは、本気で使えば12時間程度の走行でオーバーホールが必要。練習走行も含めれば大会のたびにエンジンを開けることになります。タイムイズマネーですから、年間何戦も出場するドライバーにROTAX MAXはとても嬉しい設計です」。
コスパのよさはメンテナンス面だけではない。ステップアップを狙う場合は、競技レベルの高いステージで戦えるマシンが必要になる。世界基準で統一された国内のMAX CHALLENGEは、世界選手権であるMAX GRAND FINALSへと直結するカテゴリーだ。
国内で結果を残したマシンで世界に羽ばたける仕組みは、若手にとっても大きな魅力だ。GRAND FINALSへの出場が、18歳未満がフォーミュラに参戦するための限定ライセンス発行条件になっていることも、若手の参入を促進している。
「エンジンの輸入代理をしている栄光さんはステップアップの提案や、海外参戦時の通訳などのサポートも行っています。また近年は全年齢でROTAX MAXの競技人口が増加しています。ステップアップを目指すなら、強い人と戦える場所に行きたいですよね」。
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仲間と共に世界を目指せる環境
「特にジェントルマンに顕著ですが、ドライバー同士の仲がとてもいいです。レースが終わると車載映像を見ながら盛り上がっている方をよく見かけます。もちろんレースは全力ですが、わいわいとセッティング出しをしているなど雰囲気は和やか。一緒に練習していることも多いです。
理由は定着率が高いことでしょう。KTよりも参戦コストとレベルが高めなので、本気でカートをやっていて経済的余裕のある人が多い印象です。レース自体も、32歳以上のMastersクラスが年齢別では盛り上がっています」。
ROTAX MAXのシリーズは主に小学生を対象としたMicro MAXから、32歳以上を対象としたSenior MAXまでクラスが豊富。それぞれが世界選手権に直結しているため、同年代と切磋琢磨しながら世界を目指せる。
「ちなみにROTAX MAXは、同じ水準のタイムで走るX30など比べてルールやマシンがユーザーフレンドリー。走行中にキャブレターや吸気ボックスに触れる必要がないため、運転だけに集中できます。またMastersクラスは最低重量が165kgなので、細身な人以外もオーバーウェイトになりにくく、参戦しやすいことが特長です」。
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