手ぶらでサーキットに行けば約2,000円から楽しめるレンタルカートだが、毎年華々しい世界選手権が開催されるほどに奥が深い。そのレンタルカートで日本一を獲得し、4輪競技へステップアップして勝利を重ねる、Racing School GoTakeインストラクター川福健太選手と、日ごろからトレーニングで欧州のカートに乗っている&Race編集長の三上和美の対談をお届け。レンタルカートがレーサーを惹きつけてやまない理由と、一筋縄では乗りこなせない理由を、世界のレンタルカートを知る二人が語る。特に川福選手は自他ともに「日本で三指に入る」という実力者だ。聞き手はアナウンサーの結川愛寿加さん。
レンタルカートの特徴
結川 まず、お二人はどのようにレンタルカートに乗っていますか?
川福 僕はいろいろな場所を走るのが楽しいので、サーキットを転々としています。反対に、365日同じ場所を走りこんで「日々変わるカートの表情が見たい!」という、そのサーキットの「ヌシ」のような方もいます(笑)。
三上 私が一年の半分を過ごしているフランスでは、家の近くにサーキットが3つくらいあるほどモータースポーツが盛んです。私はSODIのGT MAXというカートのレースに毎年2、3回出ています。
川福 僕と三上さんはパリのレンタルカート24時間レースで出会ったんですよね。

レンタルカートの魅力
結川 素敵な縁ですね。レンタルカートの魅力とはズバリ何でしょうか?
川福 老若男女問わず気軽に楽しめることが一番の魅力だと思います。人それぞれの楽しみ方ができるので、自然の空気を吸い込みながら、流れる景色と非日常的なスピード感を味わうのもいいですね。
一方で本格的なモータースポーツ体験もできるので、走りを突き詰めて勝負やタイムを追求するのもカートの魅力ですね。
三上 私はブランクを挟んでいきなりレーシングカートに乗ったら肋骨が折れました。レンタルカートは体に優しいながらも、全身筋肉痛になるほど楽しめます。入門者向けと思われがちですが、フランスのレンタルカートレースには元F1ドライバーも出るなど、レベルが高い競技が可能です。
世界のトッププロとハンドルを握ったばかりのビギナーが同じレースを楽しめるレンタルカートは、貴重なモータースポーツの場だと思います。

結川 先ほど体に優しいという話がありましたが、レンタルカートはどのようなカートなのでしょうか?
川福 コースによってさまざまなカートが採用されています。各地で乗り味を比べてみると楽しいでしょう。現在の最大手はSODIです。(日本で採用されているレンタルカートの一覧はこちら)
三上 SODIはフランスのメーカーなので、フランスのサーキットは大体SODIですね。私はイギリスやポルトガルなどでも24時間耐久レースに出場しましたが、国によって主力になっているシャシーやエンジンが異なります。
速く、強くなれる
結川 レンタルカートが上手くなると、他のレースでも通用するのでしょうか?
三上 学ぶことが多くありますね。たとえばカートにはバックミラーがないので、気配を感じながらの駆け引きが重要。また「若返る」という話をよく聞きます。肌つやもよくなりますよ。もちろん若返りの中身は身体能力とドライビングスキルの向上です。
川福 本気で走ると体力的にかなり追い込めるので、トレーニングとして有用です。大会もあるので、自分の目標を立ててチャレンジするといいと思います。


レンタルカートの速さを突き詰める難しさ
結川 レンタルカートを速く走るうえで難しいことはありますか?
川福 レンタルカートは、運動神経がよかったりスポーツ走行の経験があったりすると、それなりの速さで走ることはできます。しかし本当の速さを求めると、マニアックな違いを拾い集めて積み重ねる必要があります。
走りに自信がある人も「どうして自分は1秒も遅いんだろう?」と頭をひねることもしばしば。突き詰めるほどに小さな課題が見つかっていくのが難しいです。
三上 貸し出される車両の個体差もあります。レースではくじ引きで乗るマシンを決めるのですが、場所によっては当たり外れが激しいことも。その不揃いが難しさでもあり、いろいろな人に勝利のチャンスをくれる楽しさでもあると思います。