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Home»レースカテゴリ紹介»「上手に抜かれること」大激戦のスーパー耐久ST-5クラスを参戦ドライバーが解説 (Page 8)
レースカテゴリ紹介

「上手に抜かれること」大激戦のスーパー耐久ST-5クラスを参戦ドライバーが解説

2026.6.29大矢根 翼, 三上 和美, 岩岡 万梨恵, 結川愛寿加
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国内耐久レースの最高峰であるスーパー耐久には、11クラス最大62台以上が同時にエントリーする。なかでも最も多くのエントラントを集めるのが、Racing School GoTakeインストラクターでもある岩岡万梨恵選手の参戦するST-5 F/Rクラス。2025年の富士24時間レースには合計14台、70名以上のドライバーがエントリーした。その人気の高まりからクラスが2分割されるほどの盛り上がりを見せるST-5 F/Rとは一体どんな世界なのか。岩岡選手の解説で見ていこう。

  • 2026年 ST-5クラスの概要
  • 「みんなで走らなければ何も残らない」
  • 「人馬一体」と「上手く抜かれる」の両立
    • タイヤカスを拾わずに抜かれる技術
    • タイヤを磨耗させないために
    • 最小ロスで抜かれるためのコミュニケーション

2026年 ST-5クラスの概要

ST-5FST-5R
出走レースRd.7を除く全戦Rd.7を除く全戦
参戦可能車両1500cc 未満の前輪駆動車両1500cc 未満の後輪駆動車両
主な参戦車両ホンダ・フィット
トヨタ・ヤリス
マツダ・MAZDA 2
マツダ・ロードスター
予選ベストタイム
(2025富士24H)
2.03.451(新井薫選手)2.03.234(加藤潤平選手)

スーパー耐久で最も排気量の小さいベース車両が参戦するST-5クラスは、参戦コストの低さやマシンの身近さから近年エントリーが増えている。その影響で2025年には駆動形式によってクラスが2分割された。

同クラスは排気量が小さいため、他クラスのマシンに追い抜かれながらクラス内のバトルをすることになる。サーキット内では常に後方に気を配りながら、最小限のロスで走れるように立ち回る必要がある。

分割された2クラスのうち、1500cc未満の後輪駆動車両で行われるST-5Rの参戦マシンはほぼロードスターだ。ロードスターとともにキャリアを進めてきた岩岡選手は「まずは慣れているこのクルマでと思い、ST-5Rクラスにしました。ここからさらにステップアップを目指しています」と語る。

「みんなで走らなければ何も残らない」

スーパー耐久では複数のドライバーが同じマシンのステアリングを握るため、全員が安定したタイムを刻めるセッティングが求められる。チーム内で速い人にセッティングを合わせれば勝てるわけではないところが耐久レースの妙味だ。

「私はオーバーステアがあまり得意ではないので、リアを安定させたいというオーダーを出すことが多いです。それでも『みんなで走らなければ何も残らない』とチーム力を強化しているので、大きくもめることはありません」と岩岡選手。

所属するのはオレンジのカラーリングが特徴的な村上モータース。2025年シーズンもシリーズポイントトップ(Rd.4終了時点)の名門だ。同チームでは笑顔が絶えず、レースの楽しさを再認識できる環境だという。

「以前所属していたチームのマシンを作っていただいたご縁もあり、参加前から気にかけてくださっていたチームです」

岩岡選手はパーティレース仕様のロードスターを活動の中心にしてきた。「硬い」足回りのスーパー耐久車両はコーナリング中の姿勢変化が小さいため、「どこのタイヤが荷重で潰れているかわからないのが怖く、また不慣れなスリックタイヤにも恐怖心がありました」と語る。

そこでパーティレース仕様のマシンにスリックタイヤを装着してタイヤに慣れていった。スーパー耐久への適応は、チームのサポートあってのことだった。

「人馬一体」と「上手く抜かれる」の両立

マツダが代々ロードスターに与えているキャッチコピーは「人馬一体」。「予選ではその言葉通り、ブレーキのリリースとハンドリングのタイミングに集中し、ワンミスで発生するコンマ数秒のロスを起こさないようにします。一方決勝では、タイヤカスを拾わないようにしながら他クラスのマシンに抜かれる必要があります」

タイヤカスを拾わずに抜かれる技術

スーパー耐久は最長24時間の長丁場だ。レースの中盤以降ではレコードライン外に大量のタイヤカスが堆積する。道を譲ろうとラインを外すと、路面のタイヤカスが自分のマシンのタイヤに付着(ピックアップ)してグリップを損なう。

ピックアップの影響は、スリックタイヤが採用された2024年以降特に大きくなった。タイヤカスに覆われたタイヤは温度が上がらないため、グリップ低下と同時にさらに多くのピックアップをまとう悪循環に陥る。特にST-Xクラスなどのマシンが使用しているタイヤはコンパウンドが柔らかく、一度付着すると縁石を使っても取りづらい。

レコードライン外には大量のタイヤカス

「大量にタイヤカスがついた状態で走ると、何かが壊れようにドドドドドという音が鳴ります。一所懸命アンダーステアやオーバーステアを出しながらマシンを左右にスライドさせて『ぐにゃぐにゃ』とピックアップを外すしかないのですが、これにはタイムロスのリスクがあります。

だからなるべくストレートで抜いてほしいので、コーナーが連続するセクションでは『ちょっと待って!』と自分のラインを優先して走りますね。オーバーテイクするためのラインは残しつつもタイヤカス上を走らないラインを探すのは、慣れが必要ですし神経を使います」

タイヤを磨耗させないために

他人のタイヤカスを拾わないだけでなく、自分のタイヤをいたずらに摩耗させないタイヤマネジメントも耐久レースでは重要だ。決勝レースで予選のようにアタックを続ければ、タイヤの内圧はすぐに上昇してアンダーステアやオーバーステアを誘発する「タレ」が発生する。

岩岡選手は「荷重を意識しながらタイヤのグリップを縦方向に使い、フロントタイヤをハンドルで強引に曲げない」ことを心がけていると語る。

最小ロスで抜かれるためのコミュニケーション

大量のマシンが自分を追い抜いていくST-5クラスで速く走るため、岩岡選手は他クラスのドライバーとコミュニケーションを取ることが大切だという。コースを下見するときに最適な「抜かれる場所」を特定するだけでなく、レース中の意思表示も欠かさない。

「他のマシンの接近がわかったら、ウィンカーを出して自分の進路を示します。スーパー耐久に出場し始めた頃はとても苦労しましたが、最近は意思表示しているとコミュニケーションを取りやすいと感じます」

そんな岩岡選手は東京モータースポーツカレッジ(現在は閉校)の恩師・山西康司選手の教えもあり、2018年にはスーパー耐久のAドライバー予選でトップタイムを記録した。おびえながら完走を目指したデビュー戦からは一転、現在では教える立場としても活躍し、スーパー耐久ST-5クラスを楽しみながら優勝を狙う。

「パーティレースなどで腕を磨けば、楽しく、速く走れるクラスだと思います。特に24時間レースはお祭りのような雰囲気の特別な一戦なので、ぜひこの記事をお読みの方と一緒に走れれば幸いです」

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