SUBARUは2024年5月24日〜26日開催されたスーパー耐久シリーズ第2戦・富士24時間レースで、新型のST-Qクラス参戦車両「HIGH PERFORMANCE X FUTURE CONCEPT」を発表した。マシンは次戦、スーパー耐久第3戦のオートポリスで実戦投入される。本井 雅人チーム代表に、結川愛寿加さんが開発の経緯や意気込みを伺った。
開発エピソード
「なんとしても富士24時間にデビューさせたい!」という若手の意見もあったそうだが…。開発日程の短縮を試みたものの、レース投入には間に合わず、マシンは富士24時間で発表という形をとった。
5月25日に公開された「HIGH PERFORMANCE X FUTURE CONCEPT」は、2023年の夏ごろから開発が始まったという。トヨタやマツダなど、ライバルメーカーの戦闘力強化に対抗するため、SUBARUとしても強みを出す必要に迫られていた。
「BRZはクルマを速くするネタが枯渇してきていたので、ベース車両を一新。SUBARUの強みであるAWDとターボを鍛え上げるパッケージングのコンセプトカーを制作しました」。
マシンの外観はWRXだが、あくまで次世代のハイパフォーマンスレーシングカーという位置づけ。「HIGH PERFORMANCE X FUTURE CONCEPT」の名付け親はスーパー耐久シリーズ新監督の伊藤 奨氏だ。
「エンジンや駆動系などのハードから、エンジニアや開発プロセスといいたソフト面まで、すべてハイパフォーマンスにしようというメッセージを込めたネーミングです。『X』はWRXと同じ意味ですが、未知数という意味も込められています」。
仕様
ベース車両は一見する限りWRX S4だが、随所にレース専用の工夫が施されている。
外装
「オーバーフェンダーとボンネットフードは試作部門が3Dプリンターで制作してくれた専用品。オーバーフェンダーは量産車からそのまま交換できるようになっています。試作部門がモチベーション高く作ってくれるので、大変助かっています」。
ボディには「共挑」「意志ある情熱と行動」など、レース熱をかき立てるフレーズのステッカーが張られている。車室内には交通安全祈願のお守りも。「これは誰かが付けたんでしょうね。これまで参戦していたBRZには、私が別のお守りを付けています」。レースではときに神頼みも必要だ。
現時点でのリアスポイラーには全日本ラリーで活躍中の新井 敏弘選手が愛用する形状の、STI純正オプションを搭載。実戦でどのようなスタイリングになってくるかにも注目したい。
内装
コックピットに回るとロールゲージの間からエアジャッキが覗く。メーターは量産WRX同様のデジタルメーターだが、ラップタイム表示や各種警告など、レース仕様に変更されている。「アイサイトと連携して、フラッグを認識したときに専用の警告を出します」。
コックピット周りはスイッチパネルとレーシングハンドルを装備し、他のスーパー耐久参戦マシンと遜色ない状態に仕上がっている。燃料タンクは量産車の63Lから85Lに拡大。その他の意匠内装は軽量のために取り払われ、ウィンドウはアクリルが採用されている。
エンジンルーム
エンジンは2.4Lターボモデル。「随所が量産と違う」というコメントから、発表されたマシンのエンジンは量産WRX S4に搭載されているFA24型をベースとしていることが伺える。エンジンは引き続き開発中のため、デビュー戦となるオートポリスで実戦仕様のパフォーマンスを見られるだろう。
エアコン用のコンプレッサーなどが取り除かれて軽量化され、代わりに量産車にはないCO2消火装備やオイルキャッチタンクなどが装備されている。
足回り
スバリストに「WRXのホイールは?」と聞けば異口同音に答えるメーカーがBBSだ。ホイールには機密事項が多いが、開発部とBBSが協力してレース専用に仕上げたという。
サスペンションについて多くは明かされなかったが、スーパー耐久の参戦に向けて専用品を設計。エンジンルームに伸びるブレーキの配管なども専用品に換装されている。